短編小説

□頑張れ
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「くっそ〜……!」


息を切らせながら自転車をこぐ、秀徳高校バスケットボール部所属高尾和成


「急ぐのだよ、高尾」


高尾が自転車で引っ張るリヤカーに乗ってるのは、同じく秀徳高校バスケットボール部の緑間真太郎


「じゃ、真ちゃんがこげよな〜」


「ジャンケンで負けた自分を恨むのだよ。あと、真ちゃんって言うな」


ってな感じのやり取りがずっと繰り広げられている


今日は彼女とデートだってのに、今朝いきなり『学校まで送るのだよ』と言われてとりあえずこいでいるんだが…


時間的に間に合わねー!!


「ちょ、真ちゃん!マジでデート間に合わない!!」


「その呼び方止めるのだよ。間に合うようにこげばいい話だろう」


「真ちゃんのバカー!!!」


「溺愛しすぎなのだよ」


という真ちゃんのツッコミも無視し、全速力でこいだ














ま、だからといって間に合うハズもなく10分遅刻


10分ならギリギリセーフだ


汗だくだくになりながら待ち合わせ場所に走った俺


バスケ部なだけに体力はあるけどな


「霰〜!!」


携帯をイジって待っている彼女の霰にダッシュで近寄りながら叫ぶ


「ん?…あ」


携帯から目を離し、俺の方を見る


その時には、既に俺は霰の前にいた


「遅かったね〜っていうか大丈夫?」


膝に手をついて、息を整えていると霰の優しい声がふってきた


あぁ俺の天使だ


癒される声


「あ、あぁ。もう、大丈夫」


息がある程度整ってから


「遅れてごめん!」


真ちゃんに引っ張られたから…とは言わない


男に二言はないぜ


「いいよいいよ大丈夫!私の予想だけど緑間くん関係でしょ?」


首を傾げながら聞いてくる霰にドキッとしながら


「ま、まぁな」


と答えた


霰には何でもお見通しってワケか


「…すごい汗だね?」


俺の髪の毛を触りながら心配そうに見つめてくる霰


あぁ何してもかわいい


「先にシャワー浴びる?」


「ぶふっ!!」


霰のとんでもない一言(本人は自覚ないだろうが)に思わず吹き出す俺


「ここからなら私の家近いしさ」


ね?と上目遣いで見つめてくる


あぁくっそぉぉぉ


「お、おう」


「んじゃ、行こ!」


俺の手を引っ張り、家へ誘導してくれる霰


頑張れ、俺の理性


そう思いながらついていった



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