短編小説

□私にとって
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今日は、大切な人達の試合があってそれを観ていた


結果は好きな人の勝利


試合が終わり、少し複雑な気持ちで会場を後にした私


街をウロウロしていたらいつのまにか暗くなっていた


丁度、お腹も空いたので近くにあったお好み焼き屋さんで晩ご飯をすますことにした


「いらっしゃ〜い」


いらっしゃいましたよ〜とか思いながら軽く店内を見渡したら、知り合いが3人


そしてすごい人数の高校生


よく見なくてもわかるその人達は、私が観戦した試合に出てた学校の人だ


騒がしいからかその人達は勿論、知り合いすら私の存在に気づかない


驚かしてやる!


そう思った私は、知り合いもとい好きな人に後ろからコソッと近づく


後ろから抱きついてやろうと思って構えたら…


「ん?霰か?」


向かいの席に座ってた、好きな人の対戦相手の高校ー秀徳高校にいるキセキの世代の緑間真太郎に気づかれた


今、気づくなよ今


その声に、何故か高校生全員がこちらを向く


勿論、好きな人も含めて


「え…霰っち!?」


相変わらずのあだ名で呼ぶ海常高校にいるキセキの世代ー黄瀬涼太。そして…


「霰さん…」


私の好きな人、誠凛高校にいる幻のシックスマンー黒子テツヤも私の名前を紡ぐ


「3人ともお久〜!」


みんなと違う高校に行っている私は、3人にこうして直接会うのは中学の卒業旅行ぶり


連絡はとっていたけれど


なんでもない素振りで、手をあげる


すると…


「その子誰?」


この中で唯一の女の子の誠凛高校バスケ部の監督ー相田リコが紹介を求める


相田監督の一言はその場にいるほとんどの人達の気持ちを代弁したものだろう


私が自己紹介をしようと口を開いたが


「紹介します」


誰よりも早く立ち上がってくれたテッちゃん


「帝光中学校元バスケ部マネージャーの霰さんです」


私の横に立って、丁寧に紹介してくれたテッちゃん


テッちゃんのその言葉とほぼ同時に驚きの声があがる


「「「えぇぇぇぇえ!!!!」」」


思いっきり店内で叫んだため、少し店長さんに睨まれている


「うるさいのだよ」


真ちゃんも全員を睨む


ま、確かにうるさかった


「そんなに驚くことッスかねー?」


涼ちゃんも首を傾げている


「だって、真ちゃん。帝光時代にこんな可愛いマネージャーいるとか言ってなかったじゃん!」


真ちゃんのことをそう呼ぶのは、真ちゃんと同じ秀徳高校の高尾和成


少しチャラそうな印象を受ける彼は、鷹の目(ホークアイ)という得意技で誠凛高校を追い詰めた強者だ


何故私が知っているかというと、調べたからだ


今、高校バスケで注目の選手を自分なりに解析してね


だけど…


「可愛くないですよ?」
「どこが可愛いのだ?」


……………


嬉しくないハモりかたをした私達


しかも言ってる内容同じだし


そしてふと思った


「あ、なんか真ちゃんに言われるとムカつくね〜」


つか、人に言われると腹立つ


こんなセリフを吐いているが、顔は笑顔だ


「霰っちは可愛いッスよ?」


涼ちゃんがフォローをいれるが


「涼ちゃんに言われても…。遊ばれてるようにしか聞こえない」


誰にでも可愛いとか愛想よく振る舞うから、モテるんだよこの子は



「霰、相変わらず毒舌だな」
「ヒドイッスよ〜(T ^ T)」


同時に文句?を言われる


「毒舌かどうかは知らないけど…。涼ちゃん、顔文字で表現しても可愛くないから。ウザいし」


私がニコッと微笑むと


「それは思ったのだよ」


と真ちゃん


「僕も思いました」


テッちゃんにまで言われる始末


「みんなヒドイッスよ〜」


泣くふりをし始めた涼ちゃん


「酷くないはのだよ。本当のこと言っただけなのだから」


「いや、真ちゃんのそれが一番痛烈…」


高尾くんがツッコミをいれる


ちなみに、高尾くん以外の人達はこの帝光ワールドに入り込めてない


同じ席のテッちゃんの向かいにいる誠凛高校の火神大我も、ポカンとしている


「えと…貴方、火神大我くんだよね?」


なんか、同じ席なのに可哀想なので話しかける


「あ、ああ…。なんで知ってんだ?」


我に返ったらしい火神くん


「そりゃあ、勿論!テッちゃんの新しい相方でしょ!?知らないわけないじゃない!!」


ニコッと微笑む


「そうなのか…?」


首を頷かせ自分に納得させている彼


「霰っちは黒子っちのこと好きッスからね〜!知ってて当然ッスよ。ま、俺も好きッスけど」


「おっ!?」


ちょ…いきなり何を言い出すんだこのわんこは!!


このナルシモデル!!


勝手に人の恋心暴露してんじゃねー!


もんじゃ焼きに石入れたろか!?


「霰さん、黄瀬くん。ありがとうございます」


ペコリと頭を下げるテッちゃん


あ、良かった〜


そういう"好き"に捉えられてたみたい


「いいンスよ〜」


明るくそう言った後、涼ちゃんはこちらを見てニヤリと笑う


この…策士が!!


石じゃなくモノホンのゲ●仕込んだろか!?


やっぱ分かるのかな?


分かりやすいのかな自分


丁度いいのか悪いのか…私のお腹が鳴る


「あ…」


は、恥ずかしい…ッ!!


「霰さんも一緒に食べましょう。お腹…空いてるんでしょ?」


テッちゃんが優しく話しかけてくれる


「…ありがとう!」


私は一つ椅子を持ってきてテッちゃんの横に座り、注文をした















もんじゃ焼きが私の目の前にきて、がっつく私


「火神っちに負けないくらい食べるッスね〜」


涼ちゃんが余計な一言を言う


「うっはい!ほちほら、ほなかすいへんひゃい!!」


「飲み込んでから喋れ。何を言っているのか分からないのだよ」


真ちゃんに睨みながらツッコまれる


食べてる途中に話しかけてくる涼ちゃんが悪い


ひとまず、飲み込んでから…


「うっさい!こちとら、お腹空いてんのじゃい!!」


時間差があるため、なんか…なんとも言えない空気になった


「あ、なんか…すいません」


一応謝り、また食べ始める


全部食べ終わって


「ごちそーさまです、涼ちゃん」


合掌をして、ふぅと息をつく


「って、なんで俺ッスか!!」


「え、涼ちゃんが奢ってくれるんじゃないの?」


「奢らないッスよ」


「うわ〜ん!!涼ちゃんが優しくしてくれないよ〜!」


「他の女の子だったら奢るンスけど」


「バリカン持ってきて殺ろうか」


「ちょ…その漢字怖いッス!!」


昔から涼ちゃんとはこんなやり取りを交わしている


なかなか弄りがいがあって楽しい♪


「…霰さんって、イケメン好きですか?」


テッちゃんがいきなりそう質問してくる


「え??ま、好きだけど〜…」


テッちゃんが一番好きです


心のなかではこんなに簡単に言えるのに、口にはなかなか出せない


「霰っち〜。じゃ、ここにいるメンバーで誰が一番好きッスか?」


おお、策士ワンコ


たまにはいい提案するね


これに乗じて言えってことか


確かに、私が自ら会いに行かない限りテッちゃんに会うことはそうそうないだろう


今がチャンス!!


けど、いきなり言うのは恥ずかしいので、順番に印象を言っていくことにした


「涼ちゃんは確かにイケメンだけど、なんかヤだ」


「ヒドッ…!!」


「真ちゃんは付き合ってもつまんなそう」


「余計なお世話なのだよ」


「火神くんはバスケの話しかしなさそう」


「…そうか?」


「高尾くんはチャラい」


「あ、断言??」


「テッちゃんは……」


「はい」


どうしましょ


ここからなんて言おう


好き?


いや、いきなり言うのも…


とりあえず、正直に…自分の気持ちに正直になろう


「テッちゃんは、表に出たがらないでいっつも縁の下の力持ちをやってて…。普段は影薄かったりするけど、いざコートに出たら人一倍輝いてて…。とってもカッコいい……………………かな?」


恥ずかしくて最後に"かな?"を付けたことを後悔する


怖くて誰の顔も見ることが出来ず、ただただ俯くばかり


「霰さん」


テッちゃんの声が頭に響く


肩を引き寄せられ、テッちゃんの顔が耳元に近づく


「それは…霰さんが僕の事好きと、捉えていいんですか??」


囁いてくる


鈍感なテッちゃんもさすがに気づいたようだ


他の人は全員貶して、自分だけ褒められたら誰でも気づくだろう


私は顔を真っ赤にしながらコクンと頷く


すると…


「僕も好きですよ…霰さん」


私の頬にキスを落とした


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