飛躍少女と鷹の目少年
□第7Q 超焦った!
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今日は、誠凛と海常の練習試合の日。
瑠璃は海常高校に足を運んでいた。
そして、迷った。
秀徳高校も充分広いが、海常高校も負けないくらい広い。
誠凛高校みたいに入り口の近くにあると思ったが、見つからない。
最終手段は………黄瀬に迎えに来てもらう。
そうと思いついた瑠璃は携帯を手に早速黄瀬に電話をかけた。
『はい、もしもし瑠璃っち?』
「うん。迷った、迎えよろしく」
『あ〜やっぱ迷っちゃったッスか。今どこッスか?周りには何かあるッスか?』
「池…がある」
『りょーかいッス!すぐ行くから待っててッス!』
その言葉を聞いて電話を切る。
しばらく池で泳いでる鯉を見ていると、黄瀬の声がした。
「お待たせッス!」
「ん、ありがとう」
「どういたしましてッ」
語尾に星が飛んでそうな言い方に高尾を連想させる瑠璃。
瑠璃は黄瀬の隣を歩いた。
「そういや、緑間っちとは一緒じゃないンスね」
「うん。『そんなもの興味がないのだよ』だって」
「アッハハ〜…緑間っちらしいッス」
苦笑いを浮かべる黄瀬。
「けど、来ると思う。真ちゃん。なんとなく、そんな気がする」
「マジッスか!?じゃあ、俄然負けられないッスね!」
「なんで?」
「瑠璃っちも聞いたでしょ?『キセキの世代を倒す』って。要は全員倒すつもりなンスよ、黒子っちは。つまり、緑間っちも入ってるってことッス」
――だから負けられない。まぁ、負ける気もサラサラないッスけど。
黄瀬はそう言った。確かに、この間見た感じだと黄瀬が勝つ可能性の方が遥かに高い。だが、"前までは"の話。あれから火神が少しでも成長していたら。もしくは、"試合中に成長したら"黄瀬が負ける可能性もなくはない。
「もし涼ちゃんが負けたら、慰めてあげる」
「え、ちょ…!瑠璃っちにそう言われたら、不安なンスけど!?」
「もしも……の話ね、もしも」
「うぅ〜急に不安になってきたじゃないッスか…」
ショボンと落ち込む黄瀬。図体はでかいのに、割と繊細。
「私は、涼ちゃんを応援することもテッちゃんを応援することもできない。だって、本当は…」
――戦ってほしくないから。
そういいかけた時、黄色い歓声に掻き消された。
「キャー!黄瀬くん!!」
いつのまにやら、体育館に着いたようだ。そして、黄瀬ファンの女の子たち。
「涼ちゃん、送ってくれてありがと。試合、頑張ってね」
瑠璃は足早に立ち去った。
「ちょ、瑠璃っち!」
女の子たちに紛れて瑠璃の姿を見失った黄瀬。
――瑠璃っち、最後、なんて言おうとしたンスか?
この疑問は、しばらく謎のままになる。
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