源氏

□闇に堕ちるとも
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「和音」


己を呼ぶ愛しい人の声がする。

傍にはせ参じると愛しい人は微笑んだ。

そしてあまやかな声音で囁いた。


「お前は私が恐ろしくはないのかしら?」


そんな言の葉を戯れに己に告げる。

だけれどその言の葉に何時だって自分は答えるのだ。


「いいえお方様むしろ美しいとそう私は思います」


「ずっと見つめていたいとそう思ってしまいます」


その言葉に愛しい人はくすくすと鈴の鳴るような美しい笑い声をかえした。

そして私を抱き寄せてはなさぬように

魂まで絡め捕ろうとするように腕の中に私を閉じ込めた。

そして愛しい人は囁き告げる。


「愛しい子可愛そうに魅入られてしまったの?」


「でもよろしくてよ何時かお前の魂も私が喰らうのだから」


その言の葉に私は微笑んだ。愛しい人の糧になれる。そのことがとても嬉しくて。

たとえこの身が闇に堕ちるとも後悔はしない。

むしろそのことで愛しい人とずっと共にいれるなら

こんなにも嬉しいことはないのだから。

私は抱きしめかえした。その行いに嬉しそうに笑う

愛しい人に微笑みかけながら。

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