源氏

□どんな苦しみをも
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牢に捕えられ源氏の情報を吐くように散人は拷問されていた。

だけれど散人が口を割ることはなく日々がすぎていた。

そして覚えている限りで六日目の夜。外が騒がしくなっていた。

悲鳴も聞こえてくる。自分は終わるのか…。そう思っていると

階段の方から足音が聞こえてくる。牢に向かっているようだった。

カツカツ

そして其の音は散人の牢の前で止まった。

ふわり。其の香りは…。そう思っているとあえやかな声が響いた。


「散人」


其の声は!


「お方様どうしてこのような場に…」

「お前が囚われたと聞いて来たのですよ」

「私の愛しい子が私の赦しもなく死ぬなど赦してはいませんもの」

「お方様…」


自分の為に来たのだとしても来てほしくはなかった。

生きていてほしいから。其れなのに…。


「散人帰りましょう?」

「こんなところはお前には似合いませんもの」


愛しい人を見つめる。護られてしまった。そう思い悲しくなっていると

愛しい人はあまやかに囁いた。


「散人お前が源氏を護ったのですよ?」

「お前が口を割らなかったから」

「あの人も赦して下さいましたの」

「お前を取り戻すことを」

「お方様っ!」


嬉しくて泣きそうになる。そんな散人に気づくと

牢の鍵を開けると散人を茶吉尼天は抱きしめた。

言葉のない抱擁が何よりも嬉しかった。

自分は今日のことを忘れることはない。

そう強く思う。愛しいと深く感じたことも。

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