小説
□叫ぶは求めの言の葉
1ページ/1ページ
あの人は僕にけして触れようとはしなかった。
優しくするくせに触れることだけは拒んでた。
好きなのにどうして?そう問いかけたかった。
そして哀しくて涙が零れた。
それを驚いたようにあの人は見て拭おうと手を伸ばした。
だけれどその手は届くことはなくおろされた。
それで全てが弾けた。哀しくてもう痛くてたまらなかった。
そして告げる。貴方を求める求めの言の葉を。
「どうして優しくするのさ!!」
「僕は君のことが好きなのに」
「なのに期待させないでよ」
「僕は貴方に触れてほしいのに」
ほろりと涙があふれて次の言葉を紡ぐことはできなかった。
貴方は僕を抱きしめて唇が重なった。
口付けは涙の味がした。哀しさが嬉しさに変わる。
唇を離しても貴方は僕を放さなかった。
それが嬉しくて僕は貴方に微笑みかける。
そして二人は寄り添いそれから離れることは終ぞなかった。