小説
□愛し愛しと鳴く心
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君はもう微笑むことも泣くこともない。
僕が君を壊してしまったから。
でも何故だろう?其れがたまらなく嬉しいのは。
だって君はもう何処にも行けないのだから。
僕から逃げることももうできない。
哀しいことといえばもう君が可愛らしい声で囀らないこと。
其れくらいしか思い浮かばなかった…。
なのになぜだろう?頬を伝うこの滴は何なのだろう?
「ばかみたいだ…」
「どうして」
「こんなものが流れるんだろう」
「君はもう壊れたのに…」
笑うしかなかった。だって僕は笑い泣く君を愛していたと気づいてしまったから。
其れでも僕は君を放してやれない。
もう失えないから。君を愛してしまっているから…。
流した涙は僕の心を映したかのように冷たかった。