天雪
□望んでも
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この腕の中で愛しい君はその身を委ねて眠っている。
其れを愛おしそうに見つめながら天海は思い出していた。
ただ一つの光に焦がれてやまなかったあの日々を。
一目見た光に天海は囚われた。何をしてでも手に入れたいと強く望んだ。
だけれど会えば会うほどに言の葉を交わすほどに
手に入れることは出来ないのだと悟った。
ならば壁であろう。そう思ってでも乞う思いは収まることはなく。
涙すら拭ってやれないことがあまりにも惨いとそう世界を呪いもした。
だけれど其の光は天海を選んだ。
命を懸けて追いかけて囚われたのは本当は天海の方なのだ。
強く強く望んだ君がこの手の中にいる。
あれほどに望んでも叶わないと思っていた祈りは
他でもない君が叶えてくれた。
愛しい。だけれど其れだけでは足りない。
何時もゆきに飢えている。
いっそその身を喰らい一つになりたかった。
だけれど其れすら君は赦すと知っているからすることはできなかった。
愛しい愛しいとただこの心は伝う。
「ゆき愛しい子」
今はどうかこのままで君の温もりを感じていたいから。