天雪

□この手を
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ゆきは魘されていた。夢の中でゆきは天海を探し求める。

だけれど会うことが出来ないまま夢は場面を変え

気づけばゆきは天海を殺しているのだ。

天海は其れを幸福そうに受け入れている。

其れが何よりゆきは耐えれなかった。


「天海っ!」


目が覚めるといまだ辺りは暗かった。

はらはらと零れる涙を拭うことが出来なかった。

あまりにも夢が怖くて。

今日は天海の家に泊まりに来ていた。

だけれど傍に天海はいない。

其のことにまた泣きそうになった。

キィと扉があいた。天海がそこにはたっていた。

ゆきが起きていることに気づくと

天海は微笑もうとして其の笑みは形作られなかった。


「ゆきどうして泣いているのです」

「愛しい子どうかその訳を私に教えてごらんなさい」


ゆきはふるふると首を振った。

天海は悲しそうな顔をした。

天海はゆきに無理に聞き出すような真似をせずにただゆきを抱きしめた。


「愛しい子愛しい私は君が何よりも」


其の睦言はゆきを何よりも安心させた。

ゆきはいつの間にか眠りに落ちていた。

憂いげにこちらを見つめる天海に気づかぬまま。


「ゆき君を煩わすものは私が消しましょう」

「だから今はお眠りなさいこの腕の中で」


だからどうか逃れようなどと思わないで。

この繋いだ手を放してやることなど出来ないのだから。

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