天雪

□隔てるものは
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天海と同じ神になったから何が変わるでもなく私は天海と共に現代で生きていた。

だけれど年を取らなくなったのも事実で

溶け込めなくなったら去らなければならない。

瞬兄や都や祟は其れでも傍にいると言ってくれたけど

母や父が受け入れてくれるかどうかは分からない。

もしそうなったら二人で遠くにいこうとそう決めていた。

天海が傍にいてくれれば何も怖くないから。

今日は天海の家に泊まりに来ていた。

都はあのエロジジイと息をまいていたけど

天海になら私は構わないそう思っている。

天海は珍しく眠っていた。

すやすやと眠る其の姿に癒される。

愛おしささえ感じていた。

ずっとずっと二人で何処までも生きていく。

人で在ることを捨てたことに後悔などなかった。

天海の頭を撫でているうちに私はいつの間にか眠りに落ちていた。

天海が寝たふりをしていたなど気づかないまま。


「愛しい子。私はなんて幸せなのでしょう」

「もう君と別たれることはないのですから」

「愛しい子。ゆき君を愛しています」

「何よりも愛しい私の神子」


あまい甘い囁きが聞こえる。

頭を撫でてくれる温もりが心地いい。

好き大好き。放さないで。ずっと一緒だよ。

あまやかな囁きに夢見ごちで囁き返す。

頬を朱に染めた天海に気づかぬまま

またゆきは眠りに落ちていた。


「ゆき君はなんと愛らしいのでしょうか?」

「私と君を隔てるものはもう何もない」

「この幸福を私は手放せそうにありません」

「愛しい子。君も同じ気持ちだとよいのですが…」


天海は悲しそうにそう呟くとまたゆきの頭を撫でだした。

眠りながら愛を囁いた愛し子を手放さぬように

手を握りながら今はただ其の夢路を護って

目覚めたら微笑んでほしいとそう祈って。

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