天雪

□貴女以外は
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最近は天海との時間が中々取れないでいた。

多忙な人だと知っているけど此処まで会えないなんて…。

そう思いながらため息をはいていた。

今日はやっととれた休みの日で植物園に行くことが決まっていた。

待ち合わせの場所に着いたときには早く来すぎたのか天海の姿は見えなかった。

そんなとき横断歩道の方からがやがやとしたざわめきが聞こえてきた。

興味を持って近づくと囲まれていたのは天海だった。

ズキンッと胸が痛んだ。どうしてそう思い拭くと音がやんだ。


「愛しい子。どうしたのですか?」


顔を上げると其処には天海が佇んでいた。

答える間もなく手を握られ天海は走り出した。

暫く走ると着いた先は天海の家だった。



「すみません。愛しい子疲れていませんか?」


疲れてはいるけれどそう言いたくなくて首を振った。

天海は手を私の額へと伸ばした。


「熱はありませんね」


天海は淡く微笑むと私に話しかけた。


「愛しい子私は君に何かしてしまったでしょうか?」


どうして?そう思い首を傾げた。

天海は其れを見ると苦笑した。


「困りましたね。君は今日はまだ其の可愛らしい囀りを聞かせてくれていないのですよ?」


はっとして天海に話しかけようとするものの其れを天海は制した。

そして今度は悲しげに微笑んだ。


「愛しい子。君を困らせるのは私だけでよいというのに」

「さぁ其の言の葉でお告げなさい君を悩ませているのは誰なのですか?」


私は胸の痛みを思い出していた。天海か女性に囲まれていた時に感じた痛みを…。


「其れは天海だよ」

「私を悩ませるのは天海しかいないから」


天海は私にかそけき声で囁く。


「この世で私だけですか?愛しい子」

「其の心をしめ其の心を乱すのは私だけ?」


其の問いに私は答えた。


「貴方だけ貴方にしか赦さないもの」


其の言の葉に天海は嬉しさを隠さずに微笑みゆきを抱きしめた。

そして甘い甘い言の葉をゆきへと天海は贈る。


「私にとってもこの心を乱し悩ませるのは愛しい子君だけなのです」

「君以外は何もいらない愛しい子君だけが私の光なのです」


こんなにも愛しいとそう思うのは君だけなのです。

貴女以外は塵に等しくだからこそ貴女を失えないのだから。

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