天雪

□刹那の時すらも
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天海が現代に来てからもう一か月が経っていた。

共に居れることが嬉しくて忘れていたけれど

天海は神様で私は人の子で何時か私は天海を措いていくのだろう。

其れを想うととても悲しくて命を削る時は平気だったのに

今はたまらなく死というものが怖い。

だけれど知られたくなかった。

少しでも長く天海と一緒にいたいから…。

なのにどうして貴方は其れを赦してはくれないのだろう…。




「愛しい子。何を君は悩んでいるのですか?」


「天海ううん。何も悩んではいないよ」


どうか気づかないでそう願うのに。


「嘘をおっしゃい。君のことをずっと見ていたから分かるのですよ」


其れでも言いたくなくて口をつぐんでいると天海は微笑んだ。其れは苦笑だったけど。


「死を措いていくことを恐れているのですか?」


微笑みながら告げるでも其の笑みは泣きそうで気づいてしまった。

天海もまた恐れているのだと…。

だからだろうか今度は言うことが出来たのは。


「怖いよ。怖くてたまらない」


「貴方をまた独りにするのがとても怖いの」


思わず涙が零れそうになる。

其の涙を天海は眦に口付ることで受け止めた。

其の口付けのあまりの優しさに縋りつきたくなる。

天海は微笑みながらまるで絡め捕ろうとするように私に囁いた。


「愛しい子。君がそんなにも其れを恐れるのであれば」


「なりますか?私と同じものに」


「そうすれば私はもう恐れる必要もない」


「君のいない世界を暗闇を」


其の言の葉は何よりも甘かった。だけれど分かっていた。

其の選択は全てを捨てるということ。其れでも私はこの人が他の何よりも誰よりも欲しかった。

返答として返した口付けはとても甘くとても深かった。

刹那の時よりも貴方と共に生きる永遠をこの人も私も望んでいたから…。

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