鯖煮
□ノルンの選択
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迷うはずなどなかった。鮮烈に自分を魅了した光を志貴は選ぶと決めていたから。
選択の日に志貴は大和のもとを訪れた。大和は薄く笑った。
それを見て志貴も微笑んだ。光をもう手放すことはできないから。
そんな想いを籠めた微笑みに大和はまた笑った。
そして志貴に手を差し伸べた。その手を志貴は掴んだ。
大和は告げる。力強い言の葉で志貴を魅了する。
「志貴。君は私を選んだ」
「それを後悔させることは私はしない」
「君を私が後悔させたそのときは」
「この命を終わらせるがいい」
その誓いをもし大和が違えることがあれば、そう思いながら志貴は微笑み告げる。
「そんな日が来ないことを祈っているよ」
「でももしそんな日が来たら」
「大和お前をもう放さなくていいんだよね?」
その志貴の何処までも己を求める言の葉に大和は薄くワラッタ。
それ以上は言わせないで。そう思い志貴は大和に口付けた。
大和は拒まなかった。口付けは深まり濡れた音が響く。
彼方が愛しい。お前が愛しい。
何も語らずとも二人は口付けで雄弁に語る。
夜は今だ漆黒のベールに包まれていた。
志貴は選んだのだ。世界よりも何よりも愛しい存在を……。