鯖煮

□スクルドは歌う
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ロナウドの言う平等主義に円は賛成したわけではなかった。

ダイチの言う以前の日常に帰るということはヤマトと出会った記憶も失うこと。

そう気づいて選ぶことなどできなかった。

憂う者を見ていると彼が最後のセプテントリオンのような気がしていた。

何れ彼を円は倒す。そしてポラリスに願うのだ。

ロナウドたちを倒してヤマトが犠牲にされない世界を……。

そのためにこの腐りきった叶わない主張を子供のように叫ぶロナウドの手を取ったのだから。

今はただ願い祈ることしかできない。

愛しい人であるヤマトが生きていることを。

そのためならば何を犠牲にしてもかまわない。

だから犠牲になってもらうよ。みんなには……。

うっすらと円は微笑んだ。壮絶なまでに艶を滲ませ微笑む円を

ずっと護ってきた仲魔であるネルガルは微笑み見つめた。

何処までも愚かで愛しき主なことか。だからこそ己は付き従う。

この女の行き着く結末が見たいとネルガルは望んでいた。

それすらも円は受け入れて微笑む。今はまだ望み叶わずに二人は笑う。

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