鯖煮
□ヘルは望む
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伸ばされた手を掴めたらどれほどに良かっただろう。
憂う者をアルコルを選んだ時にヤマトが見せた笑みが頭を離れなかった。
それでもとそう思い万葉は言葉を零す。
「それをそれでも選ぶことはできなかったのだろうね」
「その道はヤマトお前を犠牲にし続けるから」
零された声に答えるものはいない。
ポラリスを倒してその先でヤマトを犠牲にしない世界をつくる。
それが万葉の望みだった。そのためにその手を取ることはできなかった。
ずっと思っている。ヤマトのことをずっと。それでも選んではならない。
傍にずっと万葉を護っていてくれるヨシツネが傍らに立った。
その眼差しに万葉は微笑み返した。こんな所で止まってなどいられないのだから。
振り返ればアルコルも待っていてそこに向かって万葉は歩き出した。
望みを叶えるのは何時だって自分の手なのだから……。
アルコルと共に待っていた万葉の仲魔であるロキが翼をはためかせた。
待っていたと言うように。それに万葉は苦笑を零した。
世界を必ずこの手に掴み取る。その望みが万葉を揺り動かしていた。