暗黙
□暗黙:4
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暗黙:4
綿菓子な気分
久々にまともに浴びた陽の光が眩しくて、笠を目深に被り直した。
顔を見られたくないという理由は、出来れば隣を歩く彼女には気取られたくないと思う。
「晋助が昼間に出歩くなんて、珍しいわ」
隣を歩く少女は、楽しそうにひょこひょこと歩く。
白い布に閉ざされた瞳で、しかし決してぶつかる事が無いのは、やはり彼女の不思議な才能のお陰なのだろう。
「私はてっきり、晋助は日の光に弱いのかと思っていたの、もやしみたいに」
もやし‥‥
‥‥何だソレェ!?
オメェの中の俺ってそんなレベルなのかァ!?
「‥‥人混みが苦手なだけだ」
本当は、指名手配の身だからなのだが、そんな事を彼女に言う勇気は無かった。
「でもね、私、嬉しいわ」
そんな俺の心中など知る由もない彼女は、くるりと顔をこちらに向けて、柔らかく声を弾ませた。
「一人で歩くのも楽しいけれど、隣に誰かが居たらもっと楽しいものっ」
そうか、コイツはいつも一人でこの町を歩いていたのか‥‥
先日の話から、彼女の交友関係を色々な意味で激しく心配した高杉は、これを機に彼女の散歩に付いて行くことにしたのだ。
あの日の出来事を思い出しながら、小さく溜め息を吐く。
ふと視線を彼女に戻すと、居なくなっていた。
居ねェ‥‥
「銀ちゃんっ」
「おっ、お嬢じゃん。また銀さんとパフェでも食いに行っちゃう〜?」
少し前方から彼女の嬉しそうな声がしたと思えば、その先に居たのはキラキラと銀髪の眩しい男と、その男に親しげに駆け寄る彼女の姿だった。
ぎ、ん、と、き‥‥
すっと銀時の手を取りはしゃぐ彼女に、何故だか黒い感情を覚えそうになる。
銀時までとは‥‥オメェの交友関係は何処まで広いンだァ‥‥
「あれ?お嬢、今日は彼氏連れですか?何何?銀さんショックぅー」
「違うわ、銀ちゃんっ。彼は私の‥‥」
私の、何?
「‥‥何なのかしら?ねぇ、晋助?」
聞くなァっ!
って‥‥ン?
本当に何なんだァ?
「さぁなァ‥‥」
なるべく小さく低い声で呟いた。
銀髪のこの男に自分の存在を気付かれたくない気持ちが、高杉の声を極限まで小さくしたのだろう。