暗黙

□暗黙:2
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「早く食べてちょうだい?手が疲れてしまうわ」

「うっ‥‥」

高杉目当ての女や遊廓の女など、媚を売るためにそういうことをしたりするし、高杉にしても、それが分かっているので問題は無い。
しかし彼女の場合他意などはなく、自然とやってのけているので、それを受ける高杉にしてみれば、どう対処すれば良いやら分からないのだ。

「早くっ」

「っ‥‥」

箸を持つ手に反対の手を添えているのが、彼女の腕の疲れを物語っている。
決断の時は迫っていた。

正直、この行為は恥ずかしい。
とてつもなく恥ずかしい。
彼女は意識していないのに、俺が意識しているということも恥ずかしい。
無駄だ。
考えるだけ、無駄。

観念したというべきか、投げやりになったというべきか、高杉は素直に口を開けることにしたようだ。

‥‥ぱく

「ねっ?美味しいでしょ?」

「ああ‥‥不味くない‥‥」

「つまり?」

「‥‥‥美味い‥‥」

彼女に誘導され渋々ではあったが高杉が「美味い」と言ったことに安心したのか、「美味しい」という気持ちを共有できたことが嬉しかったのか、彼女は満面の笑みを浮かべていた。

恥ずかしいぞっ!
何だコレ!?
何だコレ!?
嫌がらせかァ!?
俺が慌てるのを見て楽しんでんのかァ!?

「じゃあ、次は違うやつねっ」

「!!」

本気だっ!
完璧に親切だっ!!

「はい、あーん」

「いや‥‥いい、自分で食える」

そう?と、首を傾ける彼女を見ていると、益々この少女が分からなくなる。
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