風姿華伝書

□華伝書90
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一《信じた道》を・・・・

歩んでくださいませ・・。

例え、それが永遠の別れ


であったとしても・・・一

「・・・それに一・・・」

みつは強引に次々零れゆく

涙を着物の袖でぬぐうと


後ろにて立ち尽くしていた

先生の《隣》へ並んだ。


「・・・私は、もう・・・

《隣・ここに》います」


一新選組の方々のもとでは

なく、美月のもとでもなく

最後まで恋しいと想えた


《あなた》の隣に・・・一

「一・・・・・・・っ」


先生は言葉が見つからなかった。


一・・・・・ありがとうと

いう、言葉だけでは到底


表すことなど、できない


ような、感謝の想いと・・

とめどない、いとおしみの

感情が、言葉にした途端


一気に溢れ出でてしまい


そうで一・・・・・・・。

一・・・みつさん・・・一

     スッ


・・・・・みつさん。


・・・み一・・・・・っ。

   ギュルルル


「一・・・・・・・っ」

先生が手を・・・伸ばし


かけた刹那。


突如、二人の腹から響いて

きたのは、腹の虫の音。


と、同時に一気に二人の


間から、力が抜けていった。


「一・・・・・・・っ。

おっ、お腹空きましたね」

「そっ、そうですね、


もう夜も更け始めてますし

夕食にしましょうか」

「はい一・・・・・っ」
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