短篇集
□《飽き》の夜長
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ーーー元始。
女性は実に太陽であった。
真正の人であった。
ーーー今。
(…………あぁ、今宵も……)
女性は≪月≫である。
(彼の人は………来ない)
ーーーーーー………
………江戸時代。
それは、上記した平塚らいてうの
言葉にあるように、女性が女性として
の光を失い、男社会の中、まるで
月のように輝かせてもらう存在で
あった時代………。
そしてまた、贖う方法を
《識らなかった》時代。
一…………子なきは去る……………一
女子は、嫁いで子を産み親を慈しみ、
ひたすら夫に、尽くす………。
例え、正妻でなく妾であっても、
それがこの時代の《普通》であった。
………そして。
今宵もまた女は一人、待ち続ける。
「………………」
広い広い妾宅の端で、来るか来ぬかも
わからぬ、夫の帰りをひたすらに。