短篇集

□追悼企画小説2
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「え・・・まぁ、一応。


小さい頃に道場へ通ってて

今も、一通りのことは・・

できるはず一・・・っ!」

「みっちゃんっ!!」

   ガシィッ!!!


原田さんは、その言葉に


思わず、みつの両手を掴んだ。


「はっ、はい一・・?」

わけがわからず、苦笑いを

しつつ、何とかやり過ごすみつ。


すると、原田さんは眼を


まるで少女マンガのように

輝かせ、嬉しそうにみつへ

口を開いた。


「実は、来月大事な試合


控えてんだけどよ。


世話役がいなくてさぁ


困ってたんだっ」


「そ、それはつまり・・・

マネージャーをしてくれと

いうことで一・・・?」

余りに急な話に、思考が


右往左往する。


「まぁ、そういうこったな。


やっぱ、全然剣道を


知らない人より知ってる


人にやってほしいからな」

「は、はぁ・・・・・」

どうやら、原田さんは


みつが剣道をした経験が


あることを知った上で


剣道部の世話役を頼んで


きたらしい。


みつは悩みこんだ。


確かに、いずれにせよ


部活には入ってみたいと


考えていたし、できたら


運動部が一・・・とも


思っていた。


少々、中身は違うが


剣道部のマネージャーと


言えば、これら二つの


条件を一応、満たしている。


(・・・どうしようかな)


みつの思いは固まりつつあった。


決断まであと、一押しである。


その決め手は一・・・・・

「頼むよ、みっちゃん

仕事が済んだら


いくらでも、竹刀振るって

いいからよぅ


「一・・・・・・・っ!」

と言う、原田さんの


決めセリフであった。


何とも、うまい良い回し方

である。


久しぶりに剣道をしたいと

いうみつへ、竹刀を


振るってもいい、という


言葉は殺し文句であった。

加えて、女子の剣道部が


ないことを嘆いていた


みつなら、いちころである。


「やりますっ


やらせてくださいっ!


《マネージャー》っ!!」

ついには、この一言を


口にした。


「本当かよっ、みっちゃん!


恩に着るぜ!んじゃ、


放課後さっそく、剣道場へ

来てみてくれよ。仕事内容

説明すっからさ」


「はいっ、頑張ります!」

みつは両手をグッと握り


力強く返事を返した。


勿論。


仕事などさっさと済ませて

竹刀を振るいたい!それ故である。


とここで、ふと、総司が


こちらを冷ややかに見つめ

ていることに気付いた、みつ。


怖じ気づかず、睨み返して

やると、


「マネージャーなんて


そんな生易しいもんじゃない。


逃げ出さなきゃいいけどな」


と、一言、つぶやいた。


みつはフンッとその眼から

顔を背ける。


「そんなことしやしませんから、


どうぞ、ご安心を!!」
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