短篇集

□5月11日企画小説
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   <しばしの後>


「一・・・っ、う・・・」

ズキリッと腕に伝わった


痛みと共に、みつは


ゆっくりと瞳を開いた。


見ると、真っ白な


天井らしきものが目に映る。


(さっき、私は一・・・)


剣道部の練習場に入って


誰かに怒鳴られて、


それで一・・・・・。


「どうっ?気分はよくなった?」


「一・・・っ!?!」


先程までのことを


思い返していたみつの


視界に、突然見知らぬ


女性の顔が映った。


驚いたみつは、自身に


掛けられていた布団を


はねのけ、飛び起きた。


慌てて辺りを見回すと、


白いカーテンやベットが


並んでおり、先程の女性が

キョトンとした顔で


みつを見ている。


「こ、ここは・・・?」


「一・・・見たとおり、


保健室よ。それだけ


元気なら、何の心配も


なさそうね」


「えっ!保健室っ!?」


ここまできて、ようやく


自身が保健室に寝かされて

いたことに気付いたみつ。

「あなた、剣道部の練習場

にいったでしょう?


そこで竹刀や防具で頭を


打って、気を失って


ここへ運ばれたのよ」


「気を失った・・・?」


その言葉に、ポカンとして

いた、みつは声を上げた。

「っ、あの時一・・・っ」

壁に掛けてあった竹刀へ


手を伸ばしかけた時、


誰かに怒鳴られて一・・。

『っ、危ないっ一・・・』

(あれは一・・・・・)


気を失う直前に聞いた声が

ふと、頭をよぎる。


何故か、気になったのだ。

一体、あれは一・・・。


「一・・・でも、大事に


至らなくて本当によかったわ。


<沖田君>に感謝することね」


「一・・・おき・・た?」

見慣れぬ名前に、首を


傾げる、みつ。


「知らないの?もしかして

あなた、転校生一・・・」

と、保健室の先生が


みつへ尋ね終わる前に


ガラッと保健室の戸が


開かれ一・・・これまた


見慣れぬ男の先生が


ズカズカと中へ入ってきた。


そして、保健室の先生の


手を間髪いれず、握り


「一・・・優先生。


相も変わらず、今日も


お美しい。まるで


桃源郷に咲く、一輪の


可憐な薔薇のようだよ」


と、口を開いた。


「あら、お上手ねぇ

土方センセおだてても


何も、出ないわよ?」
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