風姿華伝書

□華伝書31
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この場合半々に分ければ、と


思うが、それではならないのである。


木屋町通りと、縄手通り。


会所からの距離では木屋町通りの方が、遠い。


もし、隊士を半々にすれば


どうしても、木屋町通りの方が、


遅く着くことになる。


そうなれば、浪士達を逃がす可能性が出てくるのだ。


そこで、土方副長は、木屋町通りを


探索する隊に沖田・永倉先生など


幹部の人数を増やし、少人数で


動きやすく、かつ、戦力では土方隊に


劣らないように、振り分けた。


そして自分は残った幹部と、隊士で探索する。


完璧、とも言える振り分けであった。


これで、局長が首を横に振るはずがない。


「―・・・よしっ。わかったっ!」


二人は、ニッと笑い合った。


これが、もしかすると最後となる


かもしれない時に、たったこれだけである。


しかし、二人にとってみれば


これだけで十分であった。


お互い、自分達を武士として、


見てくれた将軍に、命を託している。


この戦で、もし、死んでも本望なのである。


そう思えば、友の死も本望のまま、


いったのだ―・・・と、悲しくはならない。









「隊を振り分けるっ。


局長と共に、木屋町通りを探索する


近藤隊に、沖田・永倉・藤堂一・・」


土方副長が十名の、名を呼んでゆき


呼ばれた者は次々と返事をしては


局長の周りに並んでいく。


「次に、縄手通りを探索する、


土方隊には斎藤・原田・井上一・・」


続いて、土方隊のメンバーが発表される。    


この中には、最年少の、


市村鉄之助の姿もあった。
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