風姿華伝書

□華伝書91
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一瞬。


この物語のヒロインだと


いうことを忘れさせる程の

みつの雄叫びが辺り一帯に

轟きわたっていった。


その悲鳴にも近い声は当然

屋敷内だけでなく、裏手の

長屋にも届いており・・。

「何やろね、さっきの


悲鳴は一・・・・・・?」

「さぁ・・・。昨日、


裏手の屋敷に引っ越して


来たゆう、お武家の


夫婦はん宅からやった


ような気ぃしたけど・・」

朝日が登ると同時に起床


していた長屋の女性達は


先程響いた声に頭をかしげる。


しかし、女性達は朝から


騒々しいお隣に怒りもせず

数人で井戸端に集まり


「昨日、チラッと見た感じ

では・・・結構、若い


お二人どしたぇ」


「そうやったん?」


「へぇ、なんや仲よさげに

話してはりました」


「・・・うちらも、十年前

やったらなぁ一・・・」

と、顔を洗いに起きてきた

自らの旦那達を横目に


ため息をついていた。

一方。


ため息どころではない


件の二人は一・・・・・。

「どっ、ど、どうして


私がその一・・・っ」

「ち、違うんですよ


みつさんっ!これには


《わけ》があって・・・」
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