風姿華伝書

□華伝書64
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一眼が・・・見えない?一

「どういうことなのですか?


教えてくださいっ」


「一・・・・・っ」


美月は、押し黙る。


言いだせなかったのか、 

言わないつもりだったのか。


それは、定かではない。


しかし、みつ自身が今まで

隠し通してきたことを  

言うべきでないと、そう


考えていた。


美月は、じっと先生に眼を

合わせる。


「それを一・・・。


俺に聞いて、どうする?


今まで、なぜ教えなかった

のかと、こいつを    

責めでもする気か・・?」

「一・・・っ、


私は、ただ一・・・っ」


「一・・・俺は、みつが


〈帰る〉と言った時、


敢えて何も言わなかった。

だが、医者として治療した

患者が戻ってくることほど

悔しいことはない。


みつは一・・・・・


戻りませんよ・・・。


もともと、新選組は女子の

いるような場ではない」


「一・・・・・っ、


しかしっ」


みつを新選組へ戻すべき 

ではない。


その美月の言葉に、先生は

驚きの表情を浮かべる。


そして、先生の言葉を聞く

前に、美月が口を開いた。

「一・・・では、聞くが


今のあなたに何ができる?

普通に生きるより、遥かに

危険な新選組という場で 

二度と、このような目に 

合わせない、という   

自信が、あなたにはあると

言い切れるのか?」


「一・・・・・っ!」


先生は、言葉を失った。


一誰も・・いらない・・一

そう、決めた自分に、  

今、何ができる・・・?


頭の中で、その想いだけが

ぐるぐると、駆け巡ってゆく。


するとふと、先程の、


みつの笑顔が頭に浮かんだ。


そして、想う。


一・・生きていてほしい。

・・・どんな形でもいい 

鬼への恐怖から救って  

くれた、この人だけは


生きて、幸せに・・・・一
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