風姿華伝書

□華伝書61
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恥ずかしそうに、頭へ手を

置き、答える先生。


そして、ある包みをみつに

差し出した。


「・・・昨日のお礼に、


おだんご買ってきたんです。


食べませんか?」


「えっ、では一・・・っ」

一・・・姉上様と・・・一

先生は、言葉にこそ   

表さなかったが、表情が 

うれしそうである。


一仲直り、できたんだ一


そう思い、知らず知らずの

うちに、みつもほほ笑みを

浮かべていた。


「よぅっ、そ・う・じ


聞いたぜ、お前、見合い話

が来てるんだってなぁ


一体、どうすんだよっ?」

と、そこへ先生をからかう

ようにして、三人トリオが

姿を現した。


三人とも顔が、とろけそう

な程に、ゆるんでいる。


「はっ、原田さん!?


どうしてそれをっ!?」

「俺達が、知らないわけ


ないでしょっ。で?


どうなったのっ?」


原田さんの質問に、狼狽 

する先生。


そんな先生の肩に手を置き

藤堂さんが、話を突き詰め

ようと、先生に詰め寄る。

「隠し事は無しだぜ、総司。


どうなったんだよ?」

「えっ一・・・」

挙げ句の果てには、   

永倉さんにまで


詰め寄られてしまい、  

逃げようにも、


できなくなってしまった。

先生は、仕方がないと  

一つのため息をもらし、 

少し、顔を朱色に


染めながら


「一・・・・・。


断りましたよ」


とだけ、つぶやいた。


「一・・・・・っ!?!」

三人トリオに驚きの表情が

浮かんでゆく中、一番  

びっくりしたのは、   

おそらく、みつだろう。


口を少し開いた状態で  

ボーッと、先生から眼を 

離せられないでいる。


「しかし、一体、


どうやって、あのミツさん

を説得したんだよ?」


「はぁ・・・まぁ、


色々とありまして・・・。

昨日のみつさんの助言も


あって、何とか、平手一つ

で済みまし一・・・?」


突然、先生の言葉が途切れる。


何やら、三人トリオの  

表情がおかしいのだ。


再び、とろけそうな程に 

にやつき始めている。


そして、原田さんの手が 

先生の腕を掴み取り・・・

「〈昨日の・・・〉たぁ、

どーゆうことか、説明して

もらおうじゃねーか、総司」


「そうそう、昨日、


みっちゃんと何があったの?」


「は、はいっ!?


な、何と言われても」

どうやら、昨日の・・と


いう先生の言葉に、反応しているらしい。


「さ、中入って話そうじゃねぇか」


「何でもないですってば!

みつさんも何とか言ってくださいよっ」

と、先生は半泣き状態で 

みつへ助けを求めたが  

おもしろ話聞きたさに火が

ついた三人トリオを今さら

止めることが、できるわけ

もなく、みつが口を開く 

頃には、ズルズルと屯所内

へ引きづられていって  

しまった一・・・。
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