風姿華伝書

□華伝書36
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そう言って、先生が   

悲しそうに話すので、  

鉄之助は、耐えきれなくなっていた。


そんなこと、ない一・・。

「そんなこと、言わないで

くださいっ。だって、もし

そうなったら、俺や皆や


局長たちだけじゃなくて、

みつ姉も、泣きますよ・・。


一・・・それでも、


いいって、いうんですか?

先生は一・・・」


「一・・・・・」


先生は、優しく、微笑み、

鉄之助の頭に、手をおいた。


「一・・・すみません。


何だか、悲しい話に、


なってしまって・・・」


「一・・・っ、もう、


いいですっ。先生に、


聞いてみようと思った、


俺が、バカでしたっ。


自分で、何とか、


してみせますっ」


鉄之助は、そう言うと、 

縁側を飛び降り、空を見上げた。


相変わらず、真っ青である。


「あっ、最後に、鉄くんっ」


走りだそうとした、   

鉄之助に、先生は、   

つけ加えるように、言った。


「確かに、あなたは


体も小さいし、体力も


少ない。だけど、


あなたにしか、


できないことだって、


あると、思いますよ」


先生は、振り返った   

鉄之助に、


ニコニコしながら、口を開く。


鉄之助としては、それが 

知りたいのだが、先生は 

何も、言わない。


後は、自身で、答えを  

見つけろ一・・・と、  

そう、無言で言っているのだ。


鉄之助は、そんな先生の 

気を、自ずと感じたのだろう、


「一・・・っ。いじわるな

先生っ」


そう言って、また、再び、

前を向くと、隊士部屋へ 

走っていってしまった。




(一・・・俺にしか、


できないこと・・か・・)

しかし、その胸中には、 

しっかりと、先生の思いが

根ずいていた一・・・。
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