風姿華伝書

□華伝書34
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一帰って・・・来たっ一


「帰ってきたぁーっ!!」

為三郎は、ふと、我に返り

大声を出しながら、台所へ

かけこんでいった。


「優姉ちゃんっ!


みつ姉ちゃんっ!


帰って来たっ!皆、


帰ってきはったよっ!!」

「んっ・・・」


みつと優は、台所の端に 

腰かけ、仮眠をとっていた。


そりゃ、そうだ。


今さっきまで、百個以上


にも、およぶだろう、  

〈おにぎり〉を、にぎって

いたのだから。


手の疲労は、最高潮に  

達し、眠気も襲ってくる。

そんな中、数時間もずっと

立ち仕事を、こなし続けた

優たち一・・・、だったが

為三郎が、かけこんで  

来るなり、勢いよく   

立ち上がると、門へ走った。


手はボロボロで、顔や髪も

ぐしゃぐしゃ。


しかし、そんなもの気にも

とめず、門へ全力で走る。

ただ、思うのは一・・・。

一沖田先生一・・・っ一




「一・・・っ」


やっとのことで、門まで 

走りきり、みつは、息を 

きらせながら、声を失った。


目の前の道を、二列に  

並んだ、新選組が    

ゆっくりと、歩いてくる。

〈誠〉の一文字の旗の  

下には、近藤局長を先頭に

原田・藤堂・永倉先生、 

土方副長、


   そして一・・・


一沖田先生の姿があった一

顔や隊服、両手は、血に 

染まり、朱色になっている。


しかし、皆、顔を少し、 

上へ向け、とても、   

誇らしそうに、歩く一・・。


そして、門前まで、来ると

局長達は、足を止めた。


ふいに、沖田先生が   

門前に、目線を向ける。


そこには、息をきらせ、 

じっと、こちらを見つめる

みつの姿が、あった一・・。
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