風姿華伝書

□華伝書33
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「一・・・うわっ!!?」

立ち尽くしてしまっていた

二人の耳に、聞き覚えの 

ある声が一・・・。


「っ、平助っ!!?」


二人は、ダッと走りだし


声の聞こえた、中庭へ向かう。


そこには、顔から倒れ、 

絶命している浪士の姿と 

その横に、仰向けで倒れて

いる、藤堂先生の姿一・・。


「平助っ、大丈夫かっ!?」


原田先生が、抱き起こす。

その額は、パックリと  

縦に深い傷が走り、明々と

血が、流れている。


「ごめ・・・。一・・・っ

しくじっちゃった・・・」

藤堂先生は、額の傷の  

痛みで顔を、歪ませながら

弱々しく、笑った。


「何言ってやがんだっ、


早く、背に乗れっ!!」


そういって、藤堂先生を 

背に乗せると、原田先生は

勢いよく、会所へ    

走っていった一・・・。




〈一方、祇園町会所は〉

その頃。


新選組が陣をはり、出発 

してからと、いうもの、 

祇園町会所は、池田屋から

運ばれてくる、ケガ人で 

ごったがえしていた。


近所の医者、数人が、  

ケガ人でごったがえして 

いる中を、必死に    

かけまわっている。


ギャアッと、治療の痛みに

耐え切れず、うめく者や


気を失っている者の中に 

沖田先生の姿もあった。


寝かされている先生の


横では、一人の医師が、 

先生の左手に、つぎ木をし

包帯を、巻いている。

つい先程、戸板に先生を 

乗せた二人の隊士が、  

かけこんできたのだ。


その後、隊士達から、  

ケガの状態を聞き、   

左手を調べたが、 


骨自体に、異常は


見当たらなかった。


おそらく、ひびが、入って

いるのだろう。


まぁ、いくら、先生でも 

階段から、転がり落ちれば

ヒビの一つや二つ、   

入っていても、不思議ではない。


故に、腕を固定するため


つぎ木をし、包帯を巻いて

いたのだ。


「一・・・っ」


すると、包帯を巻く、  

左手が痛んだのか、先生が

目を開く。


ゆっくりと、目蓋が開き 

ボーッとする眼に、   

医師の顔が、映っ一・・。

「っ、わっ!?」


「何が、〈わっ〉どすか。

せっかく、手当てしてるん

どすさかい、動かんといて

くださいっ」


「一・・・すみません」

思わず、びっくりして  

叫んでしまった、先生。


はずかしく、なって、  

顔を赤くする。


まだ、熱が高いのか、  

頭がクラクラしていた。


「ほれっ、これで仕舞っ」

ポンッ


医師は、包帯を巻き   

終えると、ポンッと、  

左手を、軽くたたく。


「いぃっ!!!」


先生は、再び、気絶しそう

な程の、痛みに襲われた。

「まぁ、これにこりたら


もう、ケガなんて、


するんや、ないどすえっ」

医師は、さっきの仕返しと

言わんばかりに、ニコッと

微笑んだ。


「一・・・はい・・」泣
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