風姿華伝書

□華伝書95
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     えぇっ!!?


鉄之助が先輩方からの


酒の勧めを断り逃げ回って

いた頃一・・・・・・・。

いつもは無口で冷静沈着な


斎藤さんでさえうっすらと

耳を赤く染め、つがれる


酒を旨そうに、飲んでいた

最中・・・・・。


突然、少し隊士部屋からは

距離があるはずの幹部棟


から、藤堂さんと永倉さん

と思われる声が新屯所へ


響き渡っていった。


「・・・何だろ?さっきの

原田先生達の声・・・・」

思わず、斎藤さんへ酒を


ついでいた鉄之助の手が止まる。


悲鳴・・・?とも考え


られる程の声に、さすがの

鉄之助も不安に思ったらしい。


先程まで、本堂と竹組みで

仕切られた北集会所の


庭先で、飲んで踊って


束の間の時間を楽しんで


いた隊士達にも、影が走っていく。


キラキラと星の瞬く快晴の

夜空の下。


不安にかられた隊士達を


巻き上げるように


屯所内に灯された燭台や


明かりにと庭先に出された

篝火が妙に騒ついた。


一・・・すると。


「一・・・大事ない。


あんな声を上げてやられる

程、あんた達の幹部は弱いのか?」


注がれた杯の酒をくぃっと

飲み干し、すっかり覚めて

しまった宴会の場に口を


挟んだのは、斎藤さん。


余程、酔いがまわっている

のか、僅かながらに瞳が


充血している。


そして、そのまま再び、


無口になり、もう一杯と


杯だけを鉄之助へ捧げた。

「そうですねっ」


その言葉に鉄之助だけで


なく、皆の顔色も良くなり

再び、先程までの宴会が


始まりを告げた一・・・。




「左之に女がぁっ!?」

一方、先程声の上がった


副長室では一・・・・・。

「本当なのかよ、左之っ」

「まさか、最近、春画本


ばっかり読んでたから


夢でも見てたんじゃないの?」


「・・・・・平助。俺は


<変態>か?」


「いっ、いや、そうじゃ


ないけどっ」
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