風姿華伝書

□華伝書80
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一・・・どうして・・・。

《哀しい》、とても・・一

   《哀しい》


一・・・いくら哀しくても

《私達・武士》には


それを哀しいと言える


場所は、ないんです・・一

(だから、皆、いつもより

明るく振る舞ってたんだ)

「一・・・・・っ」グッ


みつは顔を雲らせた。


考えてもみなかったのだ。

皆が、そこまで必死に


憤りと哀しさの狭間で


苦しんでいたことを・・。

故に、先程の油虫事件の際

いつもと同じ・・・いや、

それ以上に、原田さん達が

騒がしかったのだろう。


おそらく皆、そうやって


馬鹿な程に騒ぐでもしない

と、いてもたってもいられ

なかったのだ。


《山南さん切腹》の真相は

わからないまま一・・・


淡々と切腹は終わり、


簡単な説明しか聞かされず

翌日には、忙しい隊務の


日々一・・・・・。


みつは顔を上げた。


「一・・・沖田先生は、


もう大丈夫なのですか?」

一人を斬ったことのない


あなたに、一体、何が


わかるというんですか!一

先生は、その瞳を静かに


見つめ、


「まぁ、この間よりは


<楽ですよ>一・・・・・」

とだけ、答えた。


一・・・<わかります>一


あの時。


みつさん。


あなたは、私の横に


いてくれた一・・・・・。

一・・・隣で


《泣いてくれたんです》一

     スッ


「・・・先生?・・・」


先生はみつの肩に手をかける。


「・・もう、行きなさい。

あまり待たせると、


鬼副長は怖いですから。


皆のために、和尚方を


説得してくれるのでしょう?」


ニコッと微笑む、先生。


「私に一・・・できると


お思いになりますか?」


「一・・・・・えぇ。


できますよ・・・・・。


  <みつさんなら>


きっと一・・・・・」


「一・・・・・っ」


一・・今まで、幾度となく

私を<救けてくれた>


あなた・・・なら一・・一
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