みじかいの

□不思議の国の
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ことり。


目の前に置かれた皿をみて、思わず顔をしかめた。





「今日のは特注なんだよー」


皿を置いた張本人は私のしかめっ面が見えていないのか、はたまた見えていないふりをしているのか、微笑みを絶やさない。
どちらにしろ、今日は逃げられそうにないなと直感的に悟(さと)った。


今日は特別な日だから。
私達にとって、大事な『あの人』が帰ってくる日。


「ね、だから座ってよ。グリフォン」

結局人当たりのいい笑顔を向けられ、反論出来ないまま参加させられることになってしまった。

彼―――帽子屋の笑顔は最大の特徴であり武器。
裏に込められた想いを考えると怖ろしくて、とてもじゃないが反抗できない。
最も、私達の中では『帽子屋を怒らせてはいけない』という暗黙のルールが存在しているから、というわけでもあるのだが。


お茶会嫌いの私は、帽子屋からの誘いがある度何かと理由をつけて逃げていた。
だが、とにかく今日は『特別』なのだ。どんな理由でも逃げる事はできない。

私はしぶしぶ傍の椅子に腰掛けた。
メンバーはまばらに揃っている。
右隣には今にも机に突っ伏して寝てしまいそうな程眠そうなヤマネ。
そのヤマネの右隣にはそわそわと世話しなく肩を上下させメンバーを見回し、一人でケラケラ笑っている気違い、三月ウサギ。
向かいには先程からずっとこちらから視線を移そうとしないトカゲのビルが座っていて、今すぐにでも始められそうだ。




しかし、主役がまだいない。





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