みじかいの
□良妻宣言
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「そなたを嫁にもらう前に、言っておきたい事がある。」
分かりました。
御前様(おまえさま)の本音をお聞かせください。
夜はお疲れの御前様を労い
朝は誰よりも早く起きて、一日の基となる朝餉(あさげ)をこしらえましょう。
わたくしが腕によりをかけるのです。残さずにおあがりくださいね。
無論、御前様の妻として遅れのないよう、容姿にも気を遣うつもりでございます。
お忘れくださらぬよう。留守も護れぬ女に
妻と呼ばれる資格などありはしないという事を。
わたくしはわたくしにしか出来ないことを果たしますから
それ以外は、黙って御前様についてゆきます。
御前様の母様、父様はわたくしの親も同然
大切な方々です。分かっております。
御前様は知らぬやもしれませぬが、母様達も
わたくしを娘と呼び、日頃から気にかけてくださっているのですよ？
人の陰口言わず聞かず
醜い嫉妬も極力控えましょう。
しかしどうあっても目移りが激しいようならば
わたくしにも限界がありますので、御前様もお気をつけて。
幸福とは一人で豊かになることではなく
二人で貧しさを分け合うことでありましょう。
わたくしは御前様のもとへ、家を捨てて嫁ぎます。
ですからどうか家のないわたくしの為に
御前様が帰る場所になってくだされ。
子らが育ち、歳をとったら
御前様とわたくしはもう迎えを待つばかりでございますね。
その時は御前様を看取ってから、すぐにわたくしも参ります。
御前様を遺すような真似は、けしていたしません。
御前様の大きな手を両手で握りしめ
武士の女は余程のことがない限り、涙を見せぬものなのですが
この時ばかりは涙隠さずこぼしながら見送りまする。
「そなたのお陰で、良い人生であった」なんて
そんなお言葉は勿体のうございます。
わたくしの方こそ、幸せな一生でありました。
お忘れくださらぬよう。慕う殿方も支えられぬ女に
妻と呼ばれる資格などありはしないという事を。
お忘れくださらぬよう。わたくしのお慕いする殿方は
そして一生添い遂げたいと願う殿方は、生涯、御前様ひとりである事を。
良妻宣言
090926
さだまさしさんの「関白宣言」を大いに参考にした
前回の「関白宣言」のアナザー版。
昔の良妻賢母ってこういう感じなんでしょうね。
かかあ殿下の兎山家では考えられない←
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