みじかいの

□Only our futures
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そう・・・丁度一週間前。


私がいつものように学校から帰ってくると、家の鍵が『こじ開けられていた』。




体中を駆け巡る嫌な予感。




その予感が当たらぬようにと、祈りながら室内に駆け込む。

玄関から伸びる廊下の奥、リビングルームにあったのは






無残な家族の屍だった。






壁は血まみれ。

床にはバラバラにされた家族の腕やら足。


そんな悲惨な情景に耐え切れず、私は絶叫する。
すると開けっ放しになっていた窓から、何かが侵入してきた。


姿はまるで小鬼のよう。
焦点のあっていない目をぎょろつかせた、気味の悪い生命体。

その生命体はキィキィと、まるで黒板を引っかいたような声で鳴き、口の端を歪めて笑った。







 ≪ ヤ ラ レ ル ≫






直感的にそう思い、目を瞑る、、、その刹那――――






その生命体―――≪アレ≫の首に、“包帯の巻かれた細い腕”が伸びた。


「 ギィッッッ!? 」


驚きの声を上げた時にはもう遅く、≪アレ≫は一瞬にして壁に叩きつけられる。

少年のように細い腕から発せられたとは思えないほど、強い力だ。




≪アレ≫が気絶したのを確認すると、“第三者”は淡いサファイアブルーの瞳(め)を私に向け、あのしゃがれ声で言った。






「 後はお好きにどうぞ。 」





≪アレ≫の頭が潰れ、生命体だと判断出来なくなるまで、私はひたすらフライパンを振り下ろし続けた。

とっくに絶命したと分かっていても、ただ憎しみのままに、ずっと、ずっと。




そんな私を、“第三者”は止める事もせずに見つめていた。













「私はソフィア。 見ての通り、人間じゃない。」




私の気が済んだのと同時に、“第三者”―――ソフィアは口を開いた。

そして、続ける。



「こいつ等は異界の者。
生けし者の血肉を喰らい、何百年も何千年も生き続ける魔物さ。
正式名称は無い。私は≪アレ≫と呼んでいる。
お前の家族も、≪アレ≫に喰い殺されたのだろう。」

淡々と喋るソフィアに対し、ショックで私は口が開かない。

「、、どうし、て、、、こんな怪物が、、、??」

やっとの思いで絞り出した質問に、ソフィアは眉一つ動かさずに答えた。


「考えられる理由は一つ。
この星の環境に異常が発生し、それによって出来た空間の歪みから侵入してきたという事。 

それも、大量にだ。」





その後もソフィアの話は続いた。



 人類のほとんどがすでに≪アレ≫の体内に収まってしまっている、という事も

≪アレ≫達は『満腹』というものを知らず、完全に人間が滅ぶまで生き残りを追い続ける、という事も

――――戦い続けなければ殺される という事も


全てが信じたくない、耳を塞ぎたくなるような話だった。

ただの中学生として、今まで平凡に暮らしていたのに、、、。
一度に家族と平和を失い、ただただ愕然とする。




そんな私の表情を読み取ったのだろうか。

ソフィアは私に、声をかけた。





「死にたくないなら、ついて来れば良い。」









その日から、私はソフィアに生き残る術を教わった。

いざという時の体術や、武器を使い確実に≪アレ≫をしとめる方法まで・・・



お陰で私から、『平凡』という名の肩書きは完全に消え去った。










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