I am manager!
□No.12
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「ぅ……」
「ちっ……」
涙が止まらなかった。
止めたいのに、止まらない。
助けてくれた人に迷惑をかけてしまう。
「ぅ〜……」
立ち上がることすら出来なかった。
「……立て」
「へ?」
「立て」
「は、はい……」
私よりも高い位置にある顔を見上げて、もう一度足に力を入れる。
やっぱり、力は入らない。
「え、えっと……」
「………」
グイッ
また腕を掴まれた。
でも、全く怖いなんて感じないのはきっと優しく掴まれているから。力強く引っ張られ、私は立ち上がった。
立ち上がってしまえば不思議なもので、足には無意識に力が入る。まだ潤む目をこすりながら、立ってもなお上にある顔を再び見上げた。
「あ……ありがとうございます」
「別に……」
声自体は威圧的で、普段の私なら怯えていたかもしれない。でも、今はそんな事どうでも良かった。
お礼……しなくちゃ。
「あ、あの……」
「あ?」
声をかければギロリと睨まれるが、このままでは何も出来ずに別れてしまう。
「何か、その……お礼を、させて下さい」
「……いらねぇ」
「いえ、お願いします」
私の腕を掴んでいた手を、今度は私が掴む。
鍛えられている、いい腕だった。
すごく面倒くさそうな顔をされたが気にしない。
マネージャーは根性もつくのだ。
少し周りを見回すと、すぐ近くに喫茶店があるのが目に入った。
入り口には簡単なメニューが置かれ、ドアにはその喫茶店の目玉商品のポスターが貼られている。
「あ、あそこの喫茶店で何か……」
「いらねぇっつってんだろ!」
思い切り腕を振り払われた。
でも私も引くわけにはいかない。
「お願いします!」
「しつけぇ!」
………。
もしかして私、思い切りナンパしてないか?
そんなことに今更ながら気付いた。
「す、すみません……」
私は何をしているんだ。
ただお礼がしたいだけなのに……。
あまりの情けなさに顔を俯かせて、私は謝った。
しつこいのは失礼だよね。
「……ちっ」
「………」
「……行くぞ」
「………へ?」
上から聞こえた言葉に、思わず聞き返してしまった。
「礼、すんじゃねぇのかよ」
「あ……は、はい!」
やっぱり、この人は優しい人のようだ。
……見た目は怖いけどね。
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