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□待遠しい未来
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「触ってみてもいいか?」
「えぇ、どうぞ」
「……何で八戒が許可してんのよ。私のお腹よ、私の」

口端をひくり、訴えても返ってくるのはいつもと変わらない笑顔。抗議するだけ無駄だと改めて知る。
お腹をさするのは悟空。緊張しているのか、その手は微かに震えている。『うおお…!』なんて眼を輝かせた。

このお腹に宿った小さな命。八戒と私の愛の結晶、…なんて言ってみたりして。
8ヵ月目となればお腹は結構な大きさ。ペッタンコな時と比べればやっぱり不便なことも増えてくる。しかもそれは予想以上だった。最初はつわりもひどかった。とてつもなかった。
正直嫌になったこともあったけれども、時間が経つにつれお腹の中で元気に動くのを感じる度に、順調に育っているんだなと実感が沸いて日に日に楽しみが広がっている。

「男かな?女かな?」
「悟空はどっちだと思う?」
「ん〜…男!」
「八戒は?」

私が話を振ると八戒はそうですねぇ…なんて少し考えた後、眼をつむり仄かに笑ってこう言った。

「元気に生まれてきてくれるのなら、僕はどちらでも構いません」

八戒らしいね、なんてちょっぴり感動しちゃったりして。
「いいお父さんになるよ、絶対」って言ったら「精一杯努力します」と笑った。

「私は悟空みたいに、ポジティブで前向きで元気な子に育てたいな」
「食欲はさておき、ですけどね」
「あは、言えてる〜」
「何だよそれ、ひっでぇ!!」

冗談で意地悪をする私達に悟空はムキーッと怒った。くすくす笑いを零し「ごめんなさい」と謝る。すると悟空は言葉を詰まらせちょっとだけ拗ねて、また私のお腹を擦った。

「ね、悟空」
「ん、」
「赤ちゃん、いっぱい可愛がってあげてね?」
「…!おう!」

八戒にアイコンタクト、すると彼も嬉しそうに頷いた。悟空は照れくさそうにへへっと笑って鼻の下をこすった。

「さてと、そろそろ夕飯の準備をしましょうか。──悟空、よかったら食べてってくださいね。今日は僕が腕をふるいますから」
「マジでか!?わーいやったぜ!俺、手伝う!」
「ありがとう、じゃあまず…」


まだ見ぬ私達の赤ちゃん、早く生まれておいで。
たくさんの愛と共に待っているから。







(猿みてぇだな、何か)
(お前に言われちゃお終いだろうよ)
(何だとこのエロ河童!)
(やんのかちび猿!)
(オギャ──!)
((げっ、ヤバ…!))

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