小説
□君と俺の小咄
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「ふぁ〜、寝みぃ…」
「あっ、甲太郎!やっぱりココにいた!!もうすぐ授業始まるだろっ。こんどこそ行くぞっ」
「…嫌だ」
「嫌だじゃねーよ、そんなんだから屋上の支配者って言われるんだろ」
と皆守の前に立ちはばかり九龍はにゅっと顔を覗き込むが─
ぎゅっ──。
「うわっ!!」
九龍は腕をぐいと引っ張られ、体がグラリと傾き、皆守の胸になだれ込んだ。
「お前も、俺と寝ろ。…目の下、隈ができてるぞ」
ぽかぽか暖かい陽気に広い皆守の胸、さらさらとすくように髪を撫でられる。普段はこんなこと滅多にしないのにと九龍は思ったが心地良さに、ふわっと睡魔が押し寄せる。
トクン、トクン…
目を閉じれば、甲太郎の音が聞こえて来る。
「……今日だけ、だからな」
意識が途切れる前に最後のアガキ
九龍はそれだけ言うとすぅすぅと規則正しい寝息をたてる。
皆守は口にくわえていたアロマを肺に取り込み、ふぅーと吐きだす。
「……宝探し屋が、他人に気を許して良いのかよ」
眠っている九龍を見ながら呟く。が…声音はどこか柔らかい事は皆守は気付いていなかった。