短編集

□好きだったんだ
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ザァァアァァァ



今日も酷い雨だ
昨日も、その前も



俺の周りに居た天人を
ただひたすら斬った。


今日は返り血が酷く
此処の空気のせいなのかいつもより気分は重い


仮眠をとった時に見た嫌な夢のせいもあるだろう。




返り血を拭い取ってから
斬られた仲間の死体の中を通ってみる
生きてる奴は居ないかと


嫌な予感がするんだ
さっきから









「あれ…?高杉じゃん」


「…何してんだてめぇ、んなところで」



声の主はわかってた。
紛れも無ェ、なまえの声だ。



「あはは…」



なんで笑ってんだよ


なんで
























血だらけなんだよ





さっきのは夢だろ?
てめぇは強ェじゃねーか。

てめぇが死ぬなんて事ァ、あるめーよ



「…ごめん。やられちゃった」
「…」
「あたしね、楽しかった…よ、今まで、ありがと」




ザァァァアァァ

なまえが途切れ途切れにそう言った刹那、降り続く雨が今までより一層大きくなった


"バイバイ”


と、確かになまえの唇は動いた
周囲には雨の音に掻き消される程なまえの声は小さかったが、俺にははっきりと聞こえた。



なんで
なんで俺に謝んだよ
てめぇには他に別れを告げなきゃならねェ奴が居るだろ


白くなってんじゃねェよ
目ェ開けろよ


ムカつくんだよ。
てめぇの全てが。

それでもきっと、そんなお前が俺は






好きだったんだ



太陽を追いかける 
向日葵みたいなお前が 

俺は 
大好きだったんだ 






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