短編集
□これがあなたとの距離
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「今日も包帯だけで平気ですか?」
「あぁ、いつも悪いな」
「いえ、仕事ですから」
「フッ、またな」
あ、また少しだけ笑った。
いつもの短い会話だけど、私には貴重な時間だ。
いつも道理、だったかな…
顔、赤くないかな…
恥ずかしいな…
…また会いたいな。
「後で食堂行ってみよ」
叶いもしないけど、
少しの可能性に賭けたいんだ。
―――――……
「ジェリーさんこんにちは。
ハンバーグ定食下さい」
「あらん?
珍しいお客さんね」
「お久しぶりです」
「本当よ〜
ちゃんと食べてるの?」
「はい、苦しいほどに……」
「食べないと動けないものね〜
しょうがないのよっ」
なにげに料理長と仲良しです。
数分後
「おまち、どーん」
「ありがとうございます」
「またね〜なまえチャン♪」
手を振るジェリーさんに軽く会釈をしてテーブルに向かう。
神田さん、居ないかな
なんて考えながら……
「ッ!!」
いた
でも、リナリーさんと一緒だった。
仲良いな
そりゃあそうだよね。
小さい頃から一緒なんだもん
「いいな…」
私だって少しは自信があった
わざわざ私の所に包帯を貰いに来てると聞いたから。
それに
あんなに皆から恐れられてる神田さんが
私に笑って、謝って、挨拶もしてくれる。
でも、リナリーさんには敵わないな…
女の私から見てもかわいいしスタイルは良いし、性格も、時々怖いけど優しい。
「あ…」
そんなこと考えたら涙が溢れて来た
慌てて座ってみる
けど、
「どうしようハンバーグ、
食べれそうに、ないや……」
途切れ途切れに呟いた私の言葉は食堂の喧騒に掻き消された。
これが
あなたとの距離
(こんなふうに)
(私の初恋はほろ苦く)
(終わったのでした)
*