記憶の赤、愛しき人よ。
□疑問
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人々が気を取り直して飲み始めた頃、マスルールがどこからか飛び降りて来て、軽々と着地する。
人々は彼に気付き、ぉお、と声を漏らす。
「お前さぁ、もうちょい普通に移動できねーのかよ…」
「はぁ、すんません」
シャルルカンの呆れ文句を適当な謝罪で受け流すと、元いたテーブルに戻って椅子に座り、何事もなかったかのように酒を飲み始めた。
テーブルにはもう一つ、水色の酒が入っているグラスと空の瓶が置いたままになっていた。
先程の出来事もあって、人々の視線は自ずと彼に集中する。
ニルヴァとのことについて問いたくても、そんな勇気は到底ない。
人々は皆そわそわしつつも、中々行動に出られずにいた。
するとジャーファルとシンドバッドがマスルールの向かいに座り、マスルールは顔を上げる。
「ニルヴァはどうしましたか?無事部屋に戻れましたでしょうか」
「部屋まで運んで、着替えとか後のことは侍女に頼んで来たっス。まぁ…あいつに襲われてなきゃいいんですが」
さらっと侍女たちのことが心配になるようなことを言う。