記憶の赤、愛しき人よ。

□目覚めて
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「…………ん……」



目を覚ますと、豪奢な装飾が施された美しい天井が目に入って。

未だぼんやりした頭は、それを物語の一場面のように錯覚する。

頭や全身を包み込むのは、ふかふかの寝具。
今までもっと薄っぺらな寝具にしか寝たことがなかったし、小舟の上で眠ることにも慣れている身体には柔らかすぎて、沈んでしまうんじゃないかと思った。


「(………私…生きてる………)」

「お、起きたか!」


ずいと私の顔を覗き込むのは、嬉しそうに笑う、美しい黄金の瞳。
その瞳の持ち主は、私が最初に助けを求めたこの国の王・シンドバッドだった。
その事実は驚きを伴って私の意識を一気に覚醒させてくれ、彼の太陽のようなその笑顔は、快く私の目覚めを迎えてくれた。


手をついて起き上がろうとすると、彼が背中に手を添えて支えてくれる。


「す、すみません…」

「なに、何てことないさ」


ニッとまた、綺麗に笑う。
その距離が近過ぎて、思わず顔が熱くなる。


「おーおー、出ましたよ王サマの女たらし。お嬢さん、この人絶対下心あるから気をつけてくれよ〜」

「馬鹿なことを言うなシャルルカン!こんなに綺麗で可愛らしくてどことなく儚げで思わず守りたくなっちゃうお嬢さんに下心なんかある訳ないだろう!!」

「シン、自爆してることにお気付きなさい」


シャルルカンと呼ばれた褐色の肌に白髪の青年がヘラヘラ笑って王をからかうとシンドバッドは慌てて彼を叱るが、その内容はいささか引っ掛かる点が多く、シンドバッドの傍に控えていた文官らしき青年が呆れた様子で言う。
この青年は記憶に新しい。
確か、ジャーファルと言っただろうか。

そんな思考を巡らしながら3人のやり取りを眺めていると、反対側から大きな手が伸びてきて、私の頭をポンと撫でた。


「!」





  
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