記憶の赤、愛しき人よ。
□邂逅
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シンドリア王国。
七海の覇王の二つ名を持つ国王シンドバッドが治めるこの国では、今日も国民たちの軽快な声が飛び交う。
シンドバッドは今日もジャーファルの目を掻い潜り仕事をサボっては街を歩く。
街の匂いは好きだ。
果物や肉の焼ける香ばしい匂い、行き交う人々の抱える品物たち、明るく飾らない笑顔。
「そして何より、それらに負けない女性の艶やかな香り!!」
「何をやっているんですかあなたは!」
「っげ!!ジャーファル!!」
背後から突き刺さった、聞き慣れた怒号に思わず苦い顔をする。
しまった、もう見つかったのか。
「マスルールに匂いを辿ってもらいました。今日こそ仕事してもらいますよ!」
「うぁあ待ってくれ!あ、そっそうだ今そこにとても美味そうな果物が!!ジャーファルぅう!マ、マスルール!助けてくれ!!」
「…見苦しいッスよ、シンさん」
苦し紛れの言い訳も虚しく、ジャーファルがシンドバッドの服を掴んで引っ張って行こうとする。
と、その時。