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□clap
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八田と彼女はBAR.HOMRAのソファにそれぞれ腰掛けていた。

「すいません、ちょっと靴脱いでもいいですかね?」

さっきから足元を気にしながらもじもじしていたと思ったら彼女は八田に声を掛けた。
ああ、と軽く承諾をすると、すみませんね、と小声で謝罪をしてからおもむろに靴と靴下を脱いだ。

(靴下まで脱ぐと思っていなかったので、それを見た八田は小さく驚いたような声を上げて小さく身じろいだ。)
彼女はそのまま足の指を擦り始める。

「いやー、しもやけになっちゃったみたいで」

苦笑いしながら彼女は足を擦り続ける。
彼女の生足を見て少し顔を赤くして視線を彷徨わせていた八田に助け舟と言わんばかりに草薙が会話に入る。

「しもやけやったらお湯の中でマッサージしたらはよ治るで」

ちょっと待ってな、と言いながら草薙は何やらバーカウンターの下をごそごそと漁り始める。
その間も彼女の隣で八田はちらちらと彼女の生足を見ては顔を赤らめるのだった。

こいつの裸足初めて見た…
色白でしもやけのとこが赤くなってんじゃねえか
爪綺麗だな…
女ってみんなこんな足してんのか?
くっそ、痒さでもじもじしてて可愛いなこいつ…

「ほら、これ使い」

そう言って草薙は彼女にお湯の入ったタライを差し出す。

「ありがとうございます、えっと…」

一応ここバーなのにここでやってもいいのかな…
そんな彼女の戸惑いを汲み取って草薙は続ける。

「そっちのソファやったらお客さんも使わんし、使てもええよ。奥の部屋でやってもええけど」

彼女は草薙にお礼を述べたあと、さっき座っていたところに戻ってきて足のマッサージを始める。
ちゃぷちゃぷという水音と官能的な動きをする指先に八田はいつの間にか彼女の手元を凝視していた。
喉を鳴らして唾を飲み込む。

視線が居た堪れなかったのだろう、彼女は顔を上げ、八田と目が合うとにこりと微笑んだ。
邪な事を考えていたせいもあって、八田はびくりと体を揺らして顔を引きつらせた。

「八田さんは、しもやけとか大丈夫ですか?」

動揺して、お、おう、と返すので精一杯だった。

さっきまで彼女の足を触っていた手が八田の手を取った。

「わ、八田さんの手あったかいですね」

そう言って至極楽しそうに八田の手を両手で包み込む彼女に耐えられなくなって、耳まで真っ赤にした八田は、

「ばっ、ちょっ、見回り行ってくる!お前はもう身体冷やすんじゃねえぞ!」

そう言って足早にバーを出て行くのだった。






彼女に温かい肉まんを買って帰ってくるのは、ほんの少しあとの出来事。










〜if〜








「ほら、これ使い」

そう言って草薙は彼女にお湯の入ったタライを差し出す。

「ありがとうございます、えっと…」

一応ここバーなのにここでやってもいいのかな…
そんな彼女の戸惑いを汲み取って草薙は続ける。

「そっちのソファやったらお客さんも使わんし、使てもええよ。奥の部屋でやってもええけど」

彼女は草薙にお礼を述べたあと、さっき座っていたところに戻ってきて足のマッサージを始めるために靴と靴下を再度脱ぐ。
そこで、草薙が彼女の近くで腕まくりしていることに疑問を抱く。

「こういうんは人にしてもろた方が気持ちええやろ」

彼女の様子を察した草薙は、事も無げにそう告げる。

「えっ、でも草薙さんにそんなことさせるわけには、」

「ええのええの。女の子なんやから、お姫様にでもなったつもりでおり」

草薙は半ば強引に彼女の足を取り、マッサージを始める。
その動きはとても丁寧で、すぐに血行がよくなってきた。
次第に彼女の目がとろんとし始める。
室内には時折ちゃぷ、と水の音が静かに響いた。

なんだ、この空気。
なんつーか、よくわかんねえけど、胸がもやもやするっつーか、腹が立つっつーか
つーか草薙さんとこいつ恋人同士みたいだな
くそ、なんだよ、腹の底で重てぇモンがぐるぐるしてやがる

きっとよく分からない体調の変化で混乱してたんだと思う

「俺がやる」

気がついたときにはそう呟いていた。
草薙が楽しそうに口元を歪めた。





「ど、どうだ?」

どんな風にすればいいのか分からずに彼女に意見を乞う。
顔が熱い。
彼女の顔を見ることができず、先程から俯いたままである。

「んー、なんて言ったらいんですかね」

うーん、としばらく首を捻っていた彼女はハッとしてとんでもないことを言い始める。(既にとんでもない事態ではあるが。)

「八田さんも経験してみれば分かるんじゃないですか!?是非やらせてください!」

嬉々としてそう告げる彼女は、鎌本と三人でいるときのいつもの彼女だった。










(八田さんのおみ足うひょおおおおおおおおお)

(お、おいもういいだろ離せよ)








あとがき(memo12/6)
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