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□clap
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今日も今日とて八田さんと私と鎌本の三人は街中を並んで歩いて巡回していた。
私と鎌本は八田さんの連れ、といったかんじだ。
他愛もない会話をしながらぶらつく。
主に私と鎌本が。
私が八田さんを賛美し、鎌本がそれに突っ込み、八田さんがドン引きして距離をとる。
これが私たちの日常だ。
(八田さんがドン引きしている自覚はあるがやめるつもりはない。私は八田さんがいかに素晴らしいかという事実しか述べていないからだ。)
そんな私たちの日常を奴は簡単に壊してしまうのだ。
「みぃ〜さぁ〜きぃ〜〜〜〜〜」
「てめ、猿、何し」
ヒュンッ
という風を切る音とともに八田の視界にフェードインしてきた物体は一瞬で伏見猿比古を八田の視界から消し去った。
「あ?」
八田と鎌本の二人はしばし呆然とする。
が、視界にフェードインしてきたものが分かるとそちらを凝視する。
さっきまで伏見猿比古がいたはずのところに彼女が立っていたのだ。
彼女は伏見猿比古が彼女の飛び蹴りによって吹き飛ばされた方向を睨めつけて唾を吐いた。
「え、お、おいお前今…」
「八田さんに危害を加える可能性のある不穏分子は私が始末しておきました!」
いい笑顔で清々しく言い放った彼女は八田の手をとり、さ、行きましょう、なんて言いながらぐいぐいと八田を引っ張って歩くのだった。
そして、いつもみたいに八田が照れて、おい、離せ!なんて言って彼女に流されてしまうのである。
年頃の少女が鬼神の如きパワーとスピードで男性を蹴り飛ばすのも如何なものかと鎌本が口を開くが、
「姉さん、今のは」
彼女の一睨みで黙らされてしまうのだった。
「あっ、八田さん八田さん、今日は31日だからアイスが31%オフですよ!せっかくだから食べていきましょうよ!」
「お、おう…///」
(姉さん、いつまで八田さんの手握ってるんスかね)
後日、ヒロインちゃんは全身筋肉痛になりました。