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□clap
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深夜に八田くんの家の前に立ち、ふう、と一息溜息を吐いた。

クリスマスプレゼント喜んでくれるかな。
驚いてくれるかな。
なんて考えて思わず顔がニヤけて笑みが溢れる。

玄関の鍵穴に合鍵を挿してそっと回した。

抜き足差し足忍び足で中へと進むと、彼の寝息が聞こえてくる。
よく眠っているみたいだ。
慎重に歩を進めた。
近くまで近付くと、八田くんは小さく唸りながらこちらへ寝返りを打った。
可愛らしい寝顔が顕になる。
顔のどこにも力の入っていない安らかな、あどけない寝顔だ。
あまりの可愛さに思わず頬を啄いた。

「ん、あ…?」

「あ、ごめん、起こしちゃった?」

「…は、なんでお前が、」

寝ぼけた顔から一変、私を認めた彼は驚いた様子で起き上がる。
まだ覚醒しきってはいないのか目元をごしごしと擦っている。
とりあえずサプライズは成功したみたいだ。
嬉しくて、寝起きの八田くんが可愛くて顔がにやける。
そしてなんとなく意地悪がしたくなって、からかってみたくなって

「あなたのサンタクロースでーす」

なんて言ってみた。
途端に面白いように八田くんの顔は赤くなって、なっ、なっ、おま、などと言葉にならない声を発している。
彼の反応が面白くて、クリスマスの10ヶ月後に生まれる子供って結構多いらしいねー、なんて追い打ちも掛けてみた。
照れた様子が面白くて私がひとしきり笑っていると、その間、口をきゅっと引き結んだりチラチラとこちらに視線をよこしていた彼が、意を決したように口を開く。

「い、いいのかよ…」

「へ、」

「その、俺と…!」

そこまで言ってから彼は様子を伺うようにじっと見つめてきた。

え、だって、本気で言ったわけじゃないし、ちょっとからかおうと思っただけで、えっと、もしかして、その、あの、まだ心の準備が、

どうしよう。困った。恥ずかしい。
顔に熱が集まっていくのが分かる。
彼と真面に目を合わせられない。

じっと恥ずかしさに耐えながら俯いていると、息を詰めていたらしい彼の小さく息が吐き出される音が聞こえた。

「…なんでもねぇ」

そう言いながら八田くんは布団から抜け出して上着を羽織り私に向かって、送る、とだけ言って身支度をした。
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