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□clap
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カランカランと軽い音がしてBAR.HOMRAの扉が開かれる。

「ようこそお越しやすー」

「こんにちはー」

おずおずと雨に濡れた制服を身に纏った少女が姿を現す。

「あらら、びしょ濡れやん」

草薙に声を掛けられた少女は苦笑いをしながら会話をする。

「朝天気が良かったから大丈夫かなーって思って。傘持っていってなかったんですよねー…」

「せやな。午後から急に天気悪ぅなったもんなあ。タオル持ってくるわ。ちょっとそこで待っとき」

草薙にそう言いつけられた少女は緩やかな動作で敬礼する真似をした。
バーの中を見回してみると八田さんと目が合った。
その途端彼は瞠目して顔を真っ赤に染め上げ、ふいと視線を逸らしてしまった。
その様子を見た千歳が八田の肩に腕を回して少女に聞こえないようにひそひそと八田に話し掛ける。
その顔はニヤついていてどこか楽しげだ。

「良いっすよねー、JKの透・け・ブ・ラ」

ゴツッといい音を立てて千歳の頭を八田が殴りつけた。
八田はわなわなと震えながら、おっお前っなどと会話にならない声を上げる。
今度は八田が千歳に顔を近付けて小声で囁いた。

「ぜってー誰にも言うんじゃねえぞ」

もぞもぞと恥ずかしそうに口を動かしながら告げたあと、八田は颯爽と少女に近付いて腰に巻き付けていた上着を差し出す。

「これでも、着とけ」

かなり恥ずかしいのか、そっぽを向きながらもごもごと口篭るように言う。
ありがとうございます、と言って少女が受け取ると八田は少女と視線を合わせることなくすたすたと千歳たちの方へ戻っていった。

(どうしよう…八田さんの上着、借りちゃった…!)

また何かぎゃーぎゃー喚くように話し始めた八田の後ろ姿を眺めながら少女は八田の上着をきゅっと握り締めた。
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