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□clap
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巡回として、八田さんと私と鎌本の三人は街中を並んで歩いていた。
私と鎌本は八田さんの連れ、といったかんじだ。
そんな中、八田さんはひどく疲れた表情をしていた。
まさに、げんなりといった表現がふさわしい。
「身長差2cmって男性としては屈辱的だよね…」
「いや、でも身長近い方がキスしやすくていいじゃないっすか」
「てめえ鎌本お前八田さんのことそういういやらしい目で見てたのかあ゛あ゛ん?」
「ち、ちがうっす!俺は良かれと思って」
「全然良くねーよ!八田さんは汚らわしい男なんかにはやらん!童貞を捨てる前に処女喪失なんて笑い事じゃ済まねえぞ!」
「姉さん何言ってんすか」
会話の内容は私と八田さんの身長差についてだった。
主に私が勝手に一人で盛り上がって騒いでいる。
そんな中、ふいに私は八田さんと腕を組んだ。
「なっ、おま、何やって…!」
「しっ、少しの間だけ恋人を装ってください」
ちらり、と俺とは反対側の斜め後ろの方へ彼女が視線を流す。
「あのリーマン風のおっさんが今八田さんのことをいやらしい目つきで見てました。歩く速度を少し落としたことからも確実に八田さんのことを狙っていることが伺えます」
彼女は俺と腕を組んでいる間も鋭い目つきで周囲を警戒している。
それだけの洞察力がありながら何で俺がこんだけ動揺してんのに気づかねえんだよ!
くそっ、心臓の音がうるさくなってきた。
「…ふぅ、なんとかやり過ごせましたね、ってああああああああももも申し訳ありません!!!私としたことが八田さんにこのような失礼極まりない行為を!!!!切腹します!今すぐ腹を切って詫びます!!!!」
「い、いいいいや、いいって!早まんな!」
(どう考えても姉さん狙ってたと思うんすよね、あのリーマン。)