bookshelf

□clap
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ふいに窓の外を覗くと、はらはらと粉雪が降り注いでいることに気付いた。

「わー、八田くん、外、雪降ってる」

雪を見たせいで気のせいか冷たくなった指先を暖めるためにこたつの中へと差し入れる。
私が、さむそー、なんてぼやいてみせると、おー、なんて漫画を読みながら適当に返事をしてくる。
ちらり、と漫画から視線を外した八田くんは予想以上の積雪量だったのか、うわ、スケボー乗れねーな、なんてぼやく。

「どこか行くの?」

「あー…、いや、鎌本に漫画の続き借りるつもりだったんだけどよ」

八田くんが先程から読んでいる漫画を見せるようにして話す。
ふうん、と気のない相槌を打った。

今一緒にいるのは私なのに。
私はまだまだ一緒にいたいのに。
八田くんは鎌本さんのとこに行くんだ。
ふうん。

プライドが、ぎし、と音を立てる。
じわ、と悪戯心に火が点く。
独占欲が滲む。

「スケボー乗れなくても別にいいじゃん。今日は八田くんは私と一緒にこたつでぬくぬくするんだもん」

ほんの少し唇を尖らせて可愛げもなく言い放てば、八田くんは瞠目したあとみるみるうちにしおらしくなる。
嬉しいのか恥ずかしいのか、視線が下がってうろうろと彷徨う。
もごもごと口の中で呟くように、おう、と返事をしてくれた。
言ったはいいものの、二人っきりのこの空間ではなんだか次第に私まで気恥ずかしくなってくる。
誤魔化すように伸びをしてみせたら、足先が、ちょん、と彼の足に触れた。
大袈裟に反応した八田くんは、私と距離を取るように胡座をかいた。
なんだか私まで恥ずかしくて挙動不審になりながら正座なんてしてしまう。

雪のせいで寒くなったと思っていた指先は、いつの間にかぽかぽかと暖かく熱を放っていた。
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