bookshelf

□clap
17ページ/20ページ






「わー!すごーい!」

朝起きて窓の外を覗くと一面の雪景色が広がっている。
思わず感嘆の声を漏らしながら急いで身支度をしてHOMRAへと向かった。

「草薙さんおはようございます!」

勢いよくバーの扉を開けて鈴の音を鳴らしながら草薙さんに挨拶をする。
相手の返事も待てなくて続けざまに話す。

「雪だるま作っていいですか!?」

きらきらと少女の楽しそうな瞳に見つめられた草薙はその空気に当てられたように、ええよええよ、とはにかんで答えるのだった。

こんなにも雪が積もるなんて何年ぶりだろう。
嬉しくて、まだ来てない八田くんに見せたくて、一心不乱に雪だるまを作った。

さくさくと雪を踏みしめる音が聞こえて振り向く。

「あ、八田くん、おはよー!」

八田は、おう、と返事をして彼女に近付いた。

「雪だるまか」

「うん、そうなのー大きいでしょー」

嬉しそうに誇らしそうに、えへへ、とはにかむ彼女に釣られて八田も小さく微笑んだ。
彼女の自信作の雪だるまを眺めていた八田の視線は、するすると移動して彼女の手を目に留めた。

「おま、手袋は、」

「え、ああ、」

今初めて気付いたとでもいうように、気にもしていなかったとでもいうように彼女は両手を持ち上げて裏表を確認するようにひらひらと翳してみせた。
その両手は可哀想なくらい真っ赤で、冷たくなっているのは明らかだった。
焦った八田は、貸せ、と呟くや否や彼女の両手を自身の両手で握り覆って暖める。
恥ずかしいのか視線を逸らしながらぶっきらぼうに、ったくお前なー、ともごもごこぼしている。
その横顔が赤くなっていることに気付き、思わず視線が釘付けになった。
手の平から伝わる体温が熱くて、顔まで火照ってくる。

「いやー、お二人さん熱いねー!」

そう言いながらHOMRAから出てきた十束さんに八田くんは焦ったように手を離した。

「ち、ちがっ、これは、」

「恥ずかしがらなくていいのにー」

楽しそうにニヤニヤしながら近付いてくる十束さんに、八田くんは羞恥心を刺激されたのかますます顔を真っ赤にする。

「だから、これは、」

そう言って力を込めて力説しようとした八田くんから炎が溢れた。
ジュワッと音を立ててあっという間に周りの雪を溶かしてしまう。

「「「あ」」」

みんなの視線が雪だるまに集まったが、それはもう既に雪だるまだったもの、に成り果てており、顔のパーツとして使っていた枝たちが崩れ落ちていた。
八田と十束の視線はゆっくりと少女へと移動する。
彼らの意図を受け取った彼女は苦笑いをしながら

「あー…、今度はみんなで作りましょうか」

なんて言葉を濁すしかなかった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ