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キス、耳攻め描写あります。


















今日もまた彼、八田美咲は飽きもせず周防尊の素晴らしさについて延々と語り続ける。
やっぱ尊さんはすげーよなー!と、嬉しそうに誇らしそうに満面の笑みで私に話し掛けてくるのだ。
この話題を振られる度、少しずつ胸の内にもやもやと嫌なものが溜まっていった。
最初の頃はあまり気にならなかったが、今では気にせずにはいられないほど溜まりに溜まってしまって、意識しなくてもはっきりと感じ取ることができる。
嫉妬か独占欲か。はたまたもっと別の感情か。
今のヒロインにはこの感情をぴったりと言い表す言葉が分からなかったが、どす黒くてどろどろしていて、とてもじゃないがいいものではないことは分かっていた。
だから今日もさりげなく違う話題を振ろうとするのだが、彼の眩いばかりの楽しそうな顔を見ているとどうにも無下にすることができなかった。
だから、タイミングを逃した。
本当はもっと早くにこの話題を切り上げるべきだったのだ。


ねえ、八田くんはどうして尊さんの話ばかりするの?
私のことは?
今いっしょにいるのは私じゃないの?


「でさ、そのとき尊さ、」

八田のその続きの言葉はヒロインの唇に吸い込まれた。
八田の唇に伝わるふにゃりとした柔らかい感触と、ヒロインの暖かい吐息と体温。
一瞬何が起こったか理解できなかった八田は身体を硬直させて瞠目した。
触れていた唇と近付けていた顔を離すと視界に八田くんの顔が映り込んだ。
驚いて目を見開いた顔。
その表情からはこのあと何を言われるのか分からなくて、何を言われるのか聞きたくなくて。
今は何も言わないで欲しくて、再び彼の口を塞いだ。


視界いっぱいにヒロインの顔が映って、ふわりといい匂いがして唇に柔らかいものが押し当てられた。
一度離れたそれは視線が交わったかと思うと再び繋がれた。
鼻腔をくすぐるヒロインの香りとじっと押し当てられる柔らかい唇に、思わず口が動く。
唇を動かすとヒロインの唇がふにゃりと潰れて形を変えた。
彼女の唇を八田の上下の唇で咥えてはむはむと動かして感触を楽しみ、そのまま咥えている下唇を吸い上げる。
リップ音を立てながら唇を離し、下唇をべろりと舐め上げた。
互いの熱い吐息が口元に掛かる。
八田の唾液で濡れたヒロインの下唇は八田の吐き出した吐息を敏感に感じ取った。
ヒロインの身体をぞくりと快感が走る。
八田は彼女の首筋に顔を埋めて深呼吸するように肺いっぱいにヒロインの匂いを流し込む。
ヒロインの心臓が一際高く脈打ち、顔に血液が集まってくる。
八田が吐き出した息が首筋に掛かりぞわぞわとヒロインを追い詰めていく。
思う存分匂いを嗅いでヒロインの香りで体中を満たした八田は、ヒロインが身悶えている暇も与えず耳朶を口に含んだ。
八田の口内で舌の上で転がすようにして舐められる。
舌全体で包み込むようにれろれろと舌が這ったり舌先で啄くように耳朶を苛めたりする。
執拗に続く感覚にヒロインは無意識のうちにやんわりと八田のシャツを掴んでいた。
八田が口を開いてやっと解放されると思ったところでべろりと名残惜しそうに舐め上げられた。
耐え難い感覚にヒロインは、きゅ、と唇を噛み締めた。
八田の唇が耳の輪郭を辿るように動き、耳殻の軟骨を軽く噛んだ。
今までにない何とも言い難い痛みにヒロインの表情がぴくりと歪んだ。
ヒロインの表情が歪んだのを痛かったものと解釈したのか丁寧に優しく執拗に耳殻を舐められる。
舌を出していることで喉の奥から八田の熱い吐息が直にヒロインの耳へと流れ込んでくる。
ヒロインは耳から脳にまで八田の吐息が流れ込んできているのではないかと思ってしまうほどに顔の熱はどんどん高くなり脳が茹だりかけていた。
ヒロインの体から力が抜けていったのをリラックスしているものと捉えたのか、八田は耳殻を舐め上げるのをやめて、くちゅり、といやらしい音を立てながら舌を彼女の耳の穴へと捩じ込んだ。
咄嗟にヒロインは、ひっ、と小さな悲鳴を上げる。
構わずに八田はぐちゅぐちゅと水音を立てながら舌を捩じ込むようにしてヒロインの耳を犯す。
ヒロインの目から生理的な涙が流れた。
八田の服を握っている彼女の手に無意識に力が込もる。
耳の穴が舌と唾液で塞がれて水音が耳の中に篭って反響する。
どこまで舌が侵入してきているのか分からない。
鼓膜の奥の奥まで犯されているような感覚にさえなってくる。
八田もヒロインもどんどん吐息が熱くなり、だんだん呼吸が荒くなる。
噛み締めていたヒロインの唇がわなわなと震え始めた。


突如、ヒロインの腰辺りにパパパパパンと素早いリズムで何かが打ち付けられた。
驚いて勢いよく顔を上げると八田と視線がかち合う。
熱に浮かされていたような、鳩が豆鉄砲でも食らったようなポカンとした表情をしていた八田はヒロインと目が合うとハッと我に返って気まずそうに顔を逸らした。

「その…、ワリィ」

気まずそうに発せられた八田の言葉からやっと何が起こったのか理解したヒロインは、呆然としていた表情から一変、盛大に吹き出して大笑いした。

「っくそっ!笑うんじゃねえよ!」

「だ、だって…!ふ、ふふふっ」

興奮して腰が動いてしまっただなんて可愛いにも程があるじゃないか

恥ずかしそうにバツが悪そうに言われた八田の言葉にもヒロインの笑いのツボは刺激されて終いにはヒイヒイと腹を抱えて笑い悶え始めた。

「あの、ふっ、ごめん、八田くん、ふふふふふっ…その、ふふっ」

「あーくそ、うるせえ。なんだよ」

ヒロインが笑えば笑うほど羞恥心に苛まれて顔を赤くしていた八田だったが、そろそろ諦めてきているようだ。
恥ずかしそうに頭を掻いているが、言動が落ち着きを取り戻し始めている。
そんな中、ヒロインは笑うのを一旦落ち着かせてからもう一度にっこりと笑顔を作って八田に投げかける。



「ね、続きしよっか」











あとがき(memo7/19)
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