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※072/お下品ギャグ注意























「ねえねえ八田くん」

「なんすか」

笑顔で話しかけてきたヒロインに、八田はちらりと視線を向け顔を赤らめたあと、そっけなく答えた。

「帽子かして」

えっ
この人はまた藪から棒に…
そう思いながらも、えへへ、と屈託なく笑う彼女の笑顔に絆されて八田はするり、と脱いでニット帽を渡す。
彼女はそれを、ありがと、とお礼をいってから受け取り、おもむろに被る。
軽く髪を整えて、

「どうかな?」

なんて聞いてくる。
自分がいつも身につけているものを好きな人が身につけるというのは、なんとも気恥ずかしいものである。

「どうって、」

言われても
胸の奥が暖かくなるっていうか
所有欲が満たされるみたいで、なんだか顔が緩むのを感じた。
言い淀む俺に構わずに彼女は飽きもせず、

「ねえ、どう?変じゃない?」

なんて嬉しそうにはしゃぎながら話し掛けてくるのだ。
ついには鏡を取り出して確認し始めた。

「私も買っちゃおうかなーお揃いだよ」

嬉しそうにはにかむ彼女に、お揃いというその言葉に、顔の熱が上がるばかりだ。

「こ、今度、連れてってやるよ、これ買ったとこ、」

小声になりながらもなんとか彼女にそれを伝えた八田は、

「ほんとに!?やったー!あっ、八田くんだけに」

なんて隣で騒ぐ彼女から恥ずかしくて顔を背けてしまうのである。
きっと赤くなっている耳は隠せていないけど。

「ちょ、ちょっと待って、なんすか今のダジャレっすか!?」

いつまでも笑うばかりの彼女に、八田はいつも絆されてしまうのである。





















別れ際に返してもらったニット帽を手に、自宅のベッドへ腰掛ける。
鼻に押し当てて匂いを嗅ぐと、彼女の髪の匂いがした。
それだけで胸がいっぱいになり、股間に熱が集まる。
俺、変態かよ…
なんて考えは丸めてゴミ箱へ放り投げる。
こうやって一日一回は彼女で抜かないと、翌日が大変なのだ。
今まで何度も彼女の前で危うく勃ちそうになってしまって、その度に理由を付けて抜け出すのに苦労した。
これはその教訓なんだ、
なんて最もらしい言い訳をつけながら今日も俺は彼女で悦に浸るのだ。











「あー寒い、寒すぎるよー」

ヒロインは八田と並んで歩きながら両手を擦り合わせて息を吐きかけた。

「昨日のヒロインさんの、やったー!八田だけに、に比べたらマシじゃないっすか」

「えー、そうかなー?」

憎まれ口を叩く俺に機嫌を悪くすることなく、彼女はへらへらと笑う。
そんな彼女の視線がある一点で止まる。

嫌な予感がした。

彼女はするりと八田の手を取り、両手で包み込む。

「わー八田くんの手、暖かーい」

幸せそうに俺の手から暖をとるヒロイン。
それと同時に俺は分かりやすいくらいに顔が引きつっているだろう。
だって、そっちの手は、






昨日俺がシコった方の手なんですけどー!!????








もちろん綺麗に洗ってはいるけど。
そういう問題ではない。






ああ、今日のズリネタはこれに決まりだな



背徳感ほど性欲に効く薬はない










家に帰ったら彼女で抜いて、また次の日には罪悪感を抱えながらなんでもないような顔をして彼女の隣を歩くのだ。












あとがき(memo4/24)
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